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連載ラノベ 夢ごこち(40)

 酒を飲み干した男たちが立ち上がった。見るからに、野蛮だ。私はこんな男たちに襲われちゃうのかな。こっちにやってくる。どうしよう。

 どこからか声がした。
 「待て」
 そう、そうこなくっちゃ。お姫様がつかまったときは、そうなるべきだ。

 野蛮な男たちを制止したのは、奥で一人だけ椅子に座っていた身なりの立派な男の人だった。髪の毛が栗色で長くて、マントを羽織っていて、騎士みたいな格好をしている。顔立ちがすっきりとしている。目が青い。きっと、この野蛮な男たちを束ねる隊長だ。

 隊長がこっちへ歩いて来た。この人は、私をどうするのだろう。

 目の前に来た隊長は、黙って私のことを見ている。無表情だ。いきなり、あごをつかまれた。けど、隊長の指、さらさらしている。細くて長い。子どもの肌みたい。きっと隊長は、野蛮なことはしない。でも、私のことをずっと見ている。私、この人に、襲われちゃうかも。体は動かない。どうしよう。

 「待て」

 また、誰か来た。でも、隊長は誰かが来たことなんて気にもしていない。私のことを見つめたまま黙っている。この人は、何があっても動じないんだ。

 隊長が、私のあごをつかんでいた手を外した。一歩後ろへ下がって、剣を抜いた。

 刃が光っている。触ったら痛そう。隊長が剣を振り上げた。やだ、怖い。でも、隊長は私に刃を向けなかった。私を縛っていた縄を断ち切った。隊長は、私を傷つけることはしないんだ。

 隊長が剣をさやに収めた。隊長の肩幅が、すごく広い。私は、この人をどこかで見たことがある。

 あとから来たのは吉原君だった。吉原君は体じゅう傷だらけで、野蛮な男たちに囲まれている。隊長は、その様子を黙って見ている。

 吉原君は剣を持っていた。そうだ、吉原君は剣道部だ。吉原君は強いんだ。

 吉原君は、野蛮な男たちをあっという間にやっつけた。吉原君、あとは隊長と戦うだけよ。私のために、早く戦って。

 吉原君が隊長をにらみつけた。
 「美雪を放せ」

 うれしい。やっぱり、吉原君は私を助けに来たんだ。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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