ご存じのように、大阪は古くから京都や奈良の都を背景に海上交通を利用して多いに栄えた。中国や南蛮といわれたヨーロッパの文化を取り入れ、豊臣秀吉が石山本願寺の跡地に、大坂城を作り、日本の政治と経済の中心地とした。
江戸時代には天下の台所と言われ、井原西鶴や近松門左衛門という江戸時代を代表する文化人も出した。
明治維新が成り「首都は大阪に」という案も出されたが、首都を大阪にしてしまうと、東京や東北が廃れてしまうと、首都は東京になったが、大阪市は大正時代から昭和のはじめにかけて「大大阪時代」と呼ばれる東京市をしのぐ大都市になった。
戦後、焼け野原になった日本をけん引したのは大阪の企業である。松下電器や住友商事、伊藤忠、丸紅、日商岩井、ジャスコ、サントリー、グリコ、日清食品などは大阪の企業である。
そんな大阪もバブル崩壊で衰退する。
バブル崩壊後、グローバル化が起こるも、大阪はついていけず2000代以降も「地盤沈下」が進んでいく。
そんな中『なにわの海の時空館』が2000年に開業した。建築費176億円、開館より毎年数億円の赤字を計上し、2013年に閉館。大阪市の放漫財政の代表例である。
なぜ大阪市は、地盤沈下中に176億円もの建築費をかけてハコモノを作ったのか?
大阪は「府と市を合わせてフシアワセ」などと言われた時代があった。例えば、大阪市の『大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)(256m)』と、大阪府の『りんくうゲートタワービル(256.1m)』では「市と府が高さの競い合い」があったという。
いまも日本3位と4位の巨大ビルだが、『りんくうゲートタワービル』の開発費は659億円。しかし売却額45億円。
『大阪ワールドトレードセンタービルディング』の開発費1193億円、売却額85億円と、どちらも信じられないほどの大損をぶっこいているわけなのだ。
大阪市の外郭団体が運営していた『ふれあい港館ワインミュージアム』は事業費約78億円で、売却額は7億1000万円だ。
大阪にはこういった「負の遺産」と言われるハコモノがたくさんあり『なにわの海の時空館』は「最後の負の遺産」と言われ、これまで2回の公募をしたが、応募した事業者は1社もなく、12月に3回目の応募をするというが、あまり期待できそうにない。
大阪市は「すぐ近くに25年に大阪万博、29年大阪IRができます」というのが売り文句だが、どちらも計画通りできるのかと危ぶまれている始末。
しかしだ、エコノミスト誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」の「世界で最も住みやすい都市」ランキング2023年版で、大阪市はベスト10位にランキングされている。がんばれ大阪!
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。