ついに斎藤国土交通大臣や鈴木金融担当大臣が、この問題についての記者会見を開いたほどだ。これは政府がただの民間中古車販売業の問題と思っていないということだろう。
ビッグモーターは、元々山口県の小さなお店から約50年で約300店舗従業員数6000人と急成長した会社で、今回辞任した前社長が一代で大きくした会社だ。現在中古車買い取り台数は、6年連続日本一と、業界を代表する企業である。
ビッグモーターの保険金不正請求の狡猾さは、例えば車体を擦ってしまったので、保険金で修理に出す。顧客は保険金だから当面お金はかからない。
修理に出された工場ではゴルフボールなどで車体をさらに傷つけるなどして、損保会社に水増し請求する。ちなみにこの時点で器物損壊罪と詐欺罪になる。顧客は、綺麗に修理されて車が返ってくるため、自分の愛車が傷つけられたことには気が付きにくい。また、損保会社とはちゃんと癒着していて、過払いをしても、損保会社も損はないと言われている。
不利益を被るのは、必要ない修理で任意保険を使用するため、等級が下がって保険料が上がってしまう顧客と最終的に損保会社の全契約者で、こんなことを繰り返していると、いつの日か保険料が値上げされてしまうことになる。ただしこの不正は表面化しにくい。
また全国のビッグモーター前の街路樹に除草剤を撒き枯らすという犯罪行為が行われていた。これは市や町の公有物などで器物破損罪になるなど、数々の不正行為や不法行為に加えて、パワハラ行為が全国300店で行われ、国土交通省や金融庁が動くことになった。
国交省は修理や車検などの不正を調べ、金融庁は癒着があったと思われる「損保ジャパン」の調査だ。すでに損保ジャパンが「不正はなかった」という虚偽報告は暴かれた。
前社長の辞任会見では不正を知らぬ存ぜぬで通し、さらに「ゴルフボールを靴下に入れて振り回して水増し請求する。本当に許せません! 【ゴルフを愛する人への冒涜です!】」と、本来顧客や車を愛する人への冒涜というべきところをこう言い切ってしまう罪の意識のなさ。
さらに「私のせいではない社員のせいだ、訴えてやる」と、まあ訴えは撤回したようだが、この前社長は何を言っているんだろう。そしてパワハラ行為を主導していたとされる前社長の息子で前副社長だった男は雲隠れしたままだ。
ちなみに前社長と前副社長がいまだにすべての株を保有している。つまり支配体制は変わっていないのだ。
そして新社長はさっそく全社員にLINEを削除するように指示。いまのこの時期に「LINEを削除せよ」なんていう指示を出すと、証拠隠滅と疑われても仕方がない。というか今後LINEなどからパワハラ等の証拠が続々と出てくる予感しかない。
またこの新社長は、自分がLINEを削除せよと命じたら、全社員が言う通りにすると思っているところに、族上がりとも噂される新社長の素養が垣間見える。
やがて警察や検察が動き、逮捕者が出るのは時間の問題ではないだろうか。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。