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「おぐらが斬る!」ワグネルのモスクワ進軍の理由と、世界に恥をさらしたプーチン

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プリゴジン氏率いる民間軍事会社「ワグネル」が、突如戦場を放棄、首都モスクワへ向けて進軍を開始した。

ワグネルはウクライナ領の激戦地バフムトから、ロシア領のロストフ州に進軍、さらに北上、ボロネジ州へと向かい、ボロネジ州にあるすべての軍事施設をあっという間に占拠した。その後も北上しモスクワを目指していた。

この異常事態にプーチン大統領は、ロシア国民に向け緊急演説を行い「ワグネル」と直接名指しはしないものの「これは裏切りである」として、ロシア軍や治安部隊に鎮圧を命じたのだ。

ここに割って入ったのが、ベラルーシのルカシェンコ大統領だ。おそらくプーチン大統領からの依頼だろうがプリゴジン氏と電話会談を行い、プリゴジン氏は「流血を避けるため」として進軍をやめた。

いったい何が起こっていたのか? ワグネルはわずかな時間でモスクワまで200キロの地点まで進軍した。これは、ロシア軍がほとんど無抵抗のまま進軍を許したということでもある。

現在、ロシアの正規軍は、ウクライナ東部の最前線で戦闘中だから、持ち場を離れることができなかった。そしてロシア国内の軍も、ワグネルを阻止するだけの戦力を用意できなかったということだ。

「ワシントン・ポスト」によると、プーチン大統領は少なくとも24時間前に、この反乱を知っていた」と報道している。プーチンは、チェチェンのカディロフ将軍を、ワグネルに当たらせようとしたが、間に合わなかったという報道もある。

ワグネルもチェチェンの軍隊も、ロシアの正規軍ではない。もしこの両軍が激突していれば、どうなったことか。

そして実質、ワグネルの進軍を止めたのはベラルーシのルカシェンコ大統領と、ワグネル創設者のプリゴジン氏の電話会談だ。つまり、正規軍ではなく外国の軍や外国人に仲介を頼まねばならないほど、プーチン大統領の影響力は弱くなっているのだろう。

それもワグネルは国ではない。民間企業の反乱に、ルカシェンコという外国の大統領に、仲裁してもらわねばならないとは。

そしてプリゴジン氏は、本来なら国家反逆罪のはずなのに無罪放免だ。プーチンは世界に恥をさらしたことになる。

プリゴジン氏の反乱理由は、ワグネルなど40ある民間軍事会社が、6月1日にロシア国防省に吸収される予定を阻止することにあった。もし吸収されれば、プリゴジン氏はワグネルを失うことになる。ワグネルはアフリカなどの政情が不安定な国々に、軍事支援を行っている。

そういう国では、えてして汚職など不正が横行しているもので、ワグネルはそれらの国の鉱山や石油などの、利権に侵入して利益を出してきた。プリゴジン氏がワグネルを失うということは、その利権や利益も失うことなのだ。プリゴジン氏も追い詰められていたということだろう。

プーチン大統領は、これまで裏切り者を許さなかった男だ。この記事を書いている時点で、プリゴジン氏の消息は不明である。隣国のベラルーシに向かうと思われているが・・・

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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