ロシアがウクライナに侵攻して1年がたった。
一方的なロシアによる暴力であり、ウクライナは専守防衛に務めた1年でもあった。
それでいて、ウクライナ側の犠牲者は民間人を含めては約12万人、ロシアは20万人である。大変な悲劇だ。
2月23日、国連総会は、ロシア軍の即時撤退などを求める決議案を141カ国の賛成多数で採択した。棄権は中国やインドなど32カ国。シリアやベラルーシなど7カ国は反対した。
とはいえ、国連総会の決議に法的拘束力はない。
つまり国連総会で圧倒的多数がロシアに撤退を求めても、国連憲章や国際法に違反する行為は許されないと叫んでも、国連の無力さを改めて見つめた1年でもあった。
1年前、ロシアはウクライナに侵攻し、数日で首都キーウは落ち、ロシア兵たちはウクライナの民衆に大歓迎されると本気で思い込んでいたらしい。破壊されたロシアのトラックなどから、パレード用の礼服が発見されたという。
しかしパレードは起きずウクライナの民衆は抵抗した。
4月にはウクライナがキーウ奪還。ブチャの虐殺が発覚。このブチャの虐殺発覚あたりから国際社会の流れが変わってきた。ロシア兵による拷問や虐殺が暴かれだしたからだ。これらは明らかな戦争犯罪である。
ロシアはこれ以外にも、原発攻撃というジュネーブ条約で禁止されている戦争犯罪も行ってきた。
この頃になると、プーチン大統領が掲げていた大義名分、「ウクライナでネオナチによる迫害・虐殺されているロシア系住民を開放する」というものであったが、ロシアびいきの人でさえ、信じる人はいなくなった。
それまでは国際社会もどう支援していいか迷っている面もあった。日本など防弾チョッキを支援しようとすると武器輸出じゃないかと騒ぐ政治家もいたくらいだ。
実は4月くらいまで国際社会も、「そろそろウクライナは負けるんじゃないか」前提の支援であったのだ。戦力一つとっても、例えばウクライナの戦闘機は69機に対して、ロシアは770機と圧倒的な差があったのだ。
しかしロシアの戦争犯罪が明らかになるにつれ、米国を中心にウクライナへの最新の武器や資金の支援も多くなり、ロシア軍はキーウ周辺から撤退する。
9月にはロシアはウクライナ東部の4州を独立国として承認した。しかしこの場所はいまでも戦場だ。
いまウクライナは2月24日以降にロシアに占領された地域の約54%を奪還した。この1年で30万以上の民間人も含めた犠牲者を出し続けているこの戦争は、まだまだ終わりそうにない。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。