「那覇に連れて行くことはありません。試合も組まれるし、ファームでまずは腕試し」
2月12日、巨人は前日に続いて若手主体の紅白戦を行った。注目は「8番中堅」、スタメン出場のチャンスをもらったドラフト1位ルーキー・浅野翔吾外野手(高松商)。2打席目にレフト前ヒットを放った。
「近く、一軍合流も」
そんな情報も飛び交っていた。
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「那覇」とは、2月後半の二次キャンプのことを指している。沖縄県那覇市に行くのは、一軍メンバーだけだ。
原監督は、集まった報道陣の「浅野がヒットを打ったが?」の質問に対し、「浅野は那覇に連れて行かない」と“一歩先の回答”を出したのである。
浅野に“結果”が出ても「連れて行かない」と決めていたのではないだろうか。
「手のひらはマメだらけ。一軍に行けば、周囲の選手が放つ打球の速度、飛距離が違ってきます。焦りや無理につながってもいけないので」(現地記者)
指揮官の胸中をそう予想する声も多く聞かれた。
しかし、12日の浅野は「前日とは異なる姿」も見せている。
11日も「8番DH」でスタメン出場しているが、試合前はベンチと控え室の間をウロウロするだけ。それに対し、12日はベンチ裏の素振り室やバックネット付近で素振りを繰り返していた。
試合後、浅野は共同会見でこう説明している。
「今日はしっかりと腰も反れて、いつも通りのルーティンで打席に入れたのが良かった」
関係者や高校時代を知るアマチュア野球記者たちによれば、浅野は試合開始の約30分前に「素振り」をしていたという。回数などのノルマがあるわけではなく、自身が納得する打撃フォームを体が思い出すまでバットを振っていたそうだ。
試合前の素振り。ヒットが出たのは、そのルーティンを行ったからだと話していた。
その浅野のルーティンについて、関係者がこう補足してくれた。
「どうして11日はやらなかったのかって? 他の選手が素振りをしていなかったからですよ。試合前のルーティンは人それぞれ。守備でリズムを作って打席に立ちたい選手はギリギリまでキャッチボールをするし…。浅野はまだ周囲に流されているので」
新人なので、周囲に気を遣うことも多いのだろう。
「12日の浅野ですが、第一打席はキャッチャーのファールフライ。初球を打ちに行きました。その積極的な姿勢はもちろんですが、対戦したのは戸郷翔征。戸郷の直球が見えていたのだから、やはり並みの新人ではありません」(プロ野球解説者)
意外だが、ネット裏にいた他球団のスコアラーたちも、このファールフライに一目を置いていた。滞空時間の長かったことを指して、「長距離ヒッターの打球だね」と話していた。
浅野自身は一軍にトライしてみたい気持ちが強いそうだ。だとすれば、結果だけではなく、図太いヤツと思われるくらい、自身のルーティンを貫くべきだろう。(スポーツライター・飯山満)