現役ドラフトは出場機会に恵まれない選手の移籍活性化を目的に今オフから導入された新制度で、各球団は必ず1人は選手の入れ替えが発生する仕組みとなっている。巨人は9日13時から開催された同ドラフトでオコエが加入、戸根千明が広島へ移籍という結果になった。
巨人・原辰徳監督は同日に取材に応じ、「新たな制度のもと、チームの補強ポイントを埋めることができる有力な選手を獲得できた」とオコエ獲得に満足げなコメントを残したことが伝えられている。それでも、ファンの間からはオコエに白羽の矢を立てたことに驚くコメントが多数寄せられた。
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オコエは関東第一高校で夏の甲子園4強入り(2015年)、高校通算37本塁打といった実績を残したことが評価され、2015年ドラフト1位で楽天に入団。ただ、翌2016年から今季までは「236試合・.219・9本・44打点」と特筆すべき成績は残せていない。
一方、グラウンド外では“調整不足でキャンプインし当時の梨田昌孝監督が激怒”(2017)、“球団寮の門限を破り二軍昇格見送り”(2017)、“奇抜な髪型に当時の平石洋介監督が激怒”(2019)と、素行面の問題が目立ち時の監督に怒られることもしばしば。
2020年11月から続く石井一久現監督時代も、同年オフの契約更改で石井監督から「そろそろ出てこないと彼自身の野球人生が苦しくなってくる」と最後通告のような言葉をかけられるなど初っぱなから話題に。その後も2021年6月に「野球はもうやる気が起きない」と知人に漏らしたことを一部週刊誌に報じられ、2021年10月中旬の試合で緩慢送球を犯したことで二軍降格となりそのままシーズンを終えるなどくすぶり続けた。
今季は素行面では悪目立ちしなかったものの成績は「6試合・.200・0本・0打点」とサッパリで、一見すると獲得のメリットは乏しいようにも見えるオコエ。それでも巨人が現役ドラフトで指名した理由は様々だろうが、まず考えられるのは原監督のコメントにもある補強ポイントの穴埋め、具体的には中堅・丸佳浩の穴埋め候補としての期待だろう。
巨人は2018年オフに広島からFA獲得した丸を中堅レギュラーとして重用してきたが、原監督は今オフ、その丸を来季から右翼にコンバートする構想を明言している。また、空いた中堅は今オフ外野挑戦中のプロ4年目・22歳の増田陸、今年のドラフトで2位指名した萩尾匡也に争ってほしい意向を示している上、12月に入ってからは新助っ人として外野手・ブリンソン(今季3Aで22本塁打)を獲得調査していることも伝えられている。
しかし、増田、萩尾はプロでの外野経験に乏しく、ブリンソンは獲得自体がまだ不透明とそれぞれ不安要素を抱えている。一方、オコエは曲がりなりにも外野手として一軍で200試合以上出場しているため、中堅争いの刺客として十分使えるのではと球団、原監督が考えたとしても不思議ではないだろう。
また、オコエ以上の“問題児”だった中田翔を主力として運用できていることも獲得決断に影響した可能性はあり得る。中田は日本ハムに所属していた2021年8月11日、同僚への暴力行為により出場停止処分を受ける。その後日本ハム・栗山英樹監督(当時/現侍ジャパン監督)から原監督への直談判もあり、同月20日に巨人への無償トレード移籍が決まったが、当時のファンの間では「不祥事起こした奴をなぜわざわざ加入させるのか」、「絶対巨人でも問題起こすぞ」といった厳しい見方が相次いだ。
ただ、中田は同年「34試合・.154・3本・7打点」と成績は振るわなかったものの、素行面では特に問題は起こさず終了。迎えた2022年も素行不良な面は見られない一方、打撃成績は「109試合・.269・24本・68打点」と大きく持ち直し、8月中旬からは岡本和真に代わり4番に座るなど打線の中核を担っている。
巨人移籍が決まった9日、オコエは楽天球団公式サイトを通じて「来年からは読売ジャイアンツで心機一転頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします」と新天地での抱負を述べている。現状では昨年の中田と同様、問題児のまま落ちぶれるだけではという厳しい見方が多数だが、ファンの予想を裏切る活躍を見せることはできるのだろうか。
文 / 柴田雅人
記事内の引用について
東北楽天ゴールデンイーグルスの公式サイトより
https://www.rakuteneagles.jp/