26日には首都キエフをはじめ各地に攻撃が加えられ、28日にはロシア軍がウクライナのチェルカースィ州などで真空爆弾(サーモバリック弾)を使用したという報告が上がった。ウクライナ侵攻の終結への道がないわけでもなく、28日午後には両国の代表団がベラルーシ国境で停戦に向けた交渉を行っている。またロシア大統領府によると、プーチン大統領がフランスのマクロン大統領と電話会談を行い、終戦の条件にウクライナの「非軍事化と非ナチ化」を求め、クリミア半島におけるロシアの主権承認を西側諸国に要求したという。
>>ロシアとウクライナの間の緊張は18世紀に予言されていた!?<<
今回のロシアのウクライナ侵攻に対して各国から非難の声が上がっており、24日、アメリカのバイデン大統領はウクライナに対して軍事侵攻を行ったロシアに対して新たな制裁を科すと発表した。バイデン大統領は「我々はロシアのハイテク輸入の半分以上を断つと推定している。それは、彼らが軍を近代化し続ける能力に打撃を与えるだろう。宇宙開発など、航空宇宙産業も衰退させるだろう」と発言。
これを受けて、ロシアの宇宙機関「ロスコスモス」のドミトリー・ロゴジン総裁はTwitterで国際宇宙ステーションの軌道や宇宙空間での位置を制御しているのはロシアだと主張。「我々との協力を妨害するならば、誰が宇宙ステーションを無秩序な軌道離脱や、アメリカやヨーロッパへの落下から救うのか?」「500トンの構造物をインドや中国に落下させるという選択肢もある。そのような見通しで彼らを脅すのか?」「ISSはロシアの上空を通過しないので、すべてのリスクはそちらが負う。その覚悟はあるか?」とツイートしている。
地球の軌道上に存在している国際宇宙ステーションは大きくロシア区画とアメリカ区画に分かれており、推進システムはロシア側に存在している。そこからこのような強気のツイートが出たものと思われるが、もし実行に移すならば軍事衝突の舞台が地球軌道上まで広がった感覚を受ける。なお、国際宇宙ステーションのロシア側の推進システムはアメリカ側からの電力供給がなければ機能しない。またアメリカ側もロシア側の推進システムがないと機能しないため、ロシアが意図的に軌道を変えるのは難しいと考えられている。
また、NASAはロゴジン総裁の発言に対しては反応しておらず、「ISSの安全かつ継続的な運用を維持するため、国際的な協力関係を続ける」と表明している。
一方でウクライナへの支援の輪も軌道上まで広がっているようだ。アメリカのテスラ社CEOであり、宇宙開発企業のSpaceX社を率いるイーロン・マスク氏は、ウクライナからの支援要請に応え、自社のスターリンク衛星を同国に移動させ、紛争で疲弊した人々に必要なインターネットアクセスを提供することを表明した。
スターリンクはSpaceX社が運営する衛星インターネットサービスであり、約2000個の衛星を使って世界中のサービスが行き届いていない地域にインターネットアクセスを提供する。海外メディアの報道によれば、ロシアの侵攻中、ウクライナのインターネットサービスは混乱し、ウクライナの主要プロバイダーGigaTransへの接続は金曜日の早朝に通常の20%以下にまで低下。インターネット環境にアクセスできない状況が続いているという。
この状況下でウクライナの副首相兼デジタル転換相のミハイロ・フョードロフ氏がTwitterでイーロン・マスク氏に向けて支援を乞うメッセージを送り、マスク氏が応えた形になる。今回のロシアのウクライナ侵攻で顕著になったが、今後は紛争に対する支援の輪も、宇宙まで広がっていくようになるのかもしれない。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
関連記事
Russia warns ISS could be 'dropped' on European enemies over Ukraine war sanctions(dailystar)より
https://www.dailystar.co.uk/news/world-news/russia-warns-iss-could-dropped-26334197
Elon Musk moves Starlink satellites over Ukraine as country's leaders beg for help(dailystar)より
https://www.dailystar.co.uk/news/world-news/elon-musk-moves-starlink-satellites-26340308