しかし、立浪監督が「清宮を教えた」ということで、新たな一面も見えていた。
「試合前、新庄監督の方から立浪監督を訪ねました。頃合いを見計らったように、新庄監督が『ちょっと見てもらえませんか』と清宮の打撃指導をお願いしたんです」(現地記者)
立浪監督は無言でそれを了承。打撃ケージから出てきた清宮幸太郎に、特別レッスンを行った。
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「(バットの)トップの位置の作り方を教えていました」(関係者)
時間にして、10分ほどだった。清宮は第3打席にヒットを放っている。「立浪効果がさっそく現れたのか?」とは言い切れないが、試合後の清宮は「体が(前に)突っ込まないようにした」と語っており、立浪監督のアドバイスを意識していたことは間違いないようだ。
10分程度の指導で、変わるか? 中日関係者がこう続ける。
「立浪監督が中日選手にアドバイスをする時は、だいたいこんな感じですよ。付きっ切りになって教えることもありますが、ピンポイントで修正すべき箇所、体のどこを意識すべきなのかを伝えています」
そう言われて、思い出したことがある。立浪監督が侍ジャパンの打撃コーチを務めた2013年WBC大会でのことだ。同大会に招集された選手たちは、「立浪サンの指導は分かりやすい」と話していた。
その時も、清宮を指導したのと同じで、“10分程度の助言”と、自らバットを持って簡単にお手本を示す程度だった。
「今、立浪監督は各コーチに任せ、自身は一歩引いたところからチームを見ている感じ。根尾昂などの若手を気に掛けていますが」(前出・関係者)
こんな見方もできる。立浪監督のアドバイスが的確なのは、それだけ高度なものであり、選手側もある程度の知識、経験を持っていなければ理解できないはずだ。
「立浪監督は根尾、石川昂弥らの若手をレギュラーに育てたいと思っています。根尾に関しては、今年は外野手で使っていく意向も明かしていましたが」(前出・同)
新庄監督はこの中日との一戦で、清宮を「1番・左翼」で起用している。「1番」にしたのは、「一打席でも多く」の思いからで、本来は一塁手なのに外野を守らせた狙いについて、「いつものポジション(一塁)だったら考え過ぎてしまう」
と、語っていた。覚醒できないのは、メンタル的に問題があるからか…。
根尾が覚醒するのは、いつなのか。本来とは異なるポジションで“大器”を育てているのは、立浪監督も同じだ。
立浪監督に守備位置のことを喋らせているうちは、根尾はその高度な打撃指導を理解できていないということになる。立浪監督は「新庄監督と清宮の2人」に、根尾とのことを重ねて見ていたのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)