1988年に高卒ルーキーながらレギュラーとして活躍しリーグ優勝に貢献、日本シリーズ出場も果たした。新人王にも輝き、俊足好打のショートストップとして、若くして中日の、さらには球界のスターの座に登り詰めた。以降も中心打者としてチームを牽引、リーグ優勝4度、2007年には日本一も経験している。実働22年間で二塁打487本は歴代1位だ。
現役時を振り返るまでもなく、球団史上屈指のプレーヤーであることは言わずもがな。まさに『切り札』とも呼べる立浪新監督への期待は測り知れない。
だが、眩い新指揮官の功績とは裏腹に、現在の中日ドラゴンズの先行きへの見通しは不透明と言わざるを得ない。ここ10年間で優勝は1度も無く、8度のBクラスと、『暗黒期』を迎えている状況だ。
特に改善急務と言えるのが打撃力。昨季のチーム打率.237はリーグワースト、さらにチーム本塁打69は12球団最少の数字。特に本塁打数は4年連続で3ケタに届いておらず、かつて他球団を震え上がらせた「恐竜打線」の面影はとうの昔に消え失せてしまっている。
新指揮官は昨年の就任会見において、「投手力の再整備」を強調しており、打線に関しては言葉少なだった。裏を返せば「言及するまでもない」とも捉えられるものの、あくまでも守備意識を高める点に重きを置くつもりでいるようだ。
一方で、キャンプイン目前となった現在、チームの補強としての新加入選手は、福岡ソフトバンクホークスから岩嵜翔(FA移籍した又吉克樹の人的補償)の他、育成契約で大嶺祐太(前千葉ロッテマリーンズ)、フランク・アルバレス、ギジェルモ・ガルシア(ともにキューバ出身)の4名。積極的な戦力強化とは言い難く、ファンからの不満の声はさらに膨らんでいることも確かだ。
ともあれ、賽は投げられた。会見時に語った指揮官の言葉に則れば、12球団トップクラスの投手力の維持を生命線とし、新たなシーズンを迎えようとしている中日ドラゴンズ。長きにわたりドラゴンズの金看板でもあった立浪新監督の元で迎える、伝統球団の再スタート。竜の進む道は今季も暗雲に包まれているが、チーム、そしてドラゴンズファンも、もう後戻りはできない。(佐藤文孝)