>>広島・鈴木のメジャー流出に「悲観することではない」の声も FA交渉の行方も左右か、ファンが期待する最後の“置き土産”とは<<
今オフのポスティングシステムに関する特例事項が、NPB各球団に報告された。同制度を活用した選手がメジャーリーグ各球団と交渉できるのは、通知された翌日から30日間だけ。しかし、今オフのMLBは選手会との労使協定の話し合いが控えている。仮にその話し合いが決裂した場合、米球団は全ての業務をストップさせるかもしれない。
そうなった場合に備えて、「球団業務がストップしたら、その間の日数はカウントしないことにしよう」との申し出がMLBからあり、NPBもそれを了承したというわけだ。
「労使協定を気にせず、時間をかけてしっかり交渉できるので、鈴木にとっては本当に良かったと思います」
セ・リーグ某球団スタッフがそう言う。
「鈴木の米球界挑戦を応援している」、そんな印象も受けた。
「鈴木をマイク・トラウトに重ねて見る声も出始めました。高く評価されていることは間違いありません」(米国人ライター)
マイク・トラウトとはエンゼルス・大谷翔平の同僚で、MVPに3度も選ばれた超一流のスラッガーだ。
鈴木をそこまで成長させたのは、個人、全体ともに練習量の多い広島球団の環境も大きい。しかし、鈴木の「個人練習」はちょっと独特なものがある。
夜間も、個人で素振りをする。ここまでなら、他のプロ野球選手と同じだが、鈴木は照明をつけないのだ。その方が集中できるからだという。
こうした鈴木を巡る特例措置の一報に合わせるかのように、中日・立浪和義監督が興味深い話をしていた。
立浪監督は取材記者団との雑談の中で、選手たちのオフの過ごし方について持論を述べた。
「巧くなる選手、レギュラーを獲る選手は自分の課題と向き合える」
「一人で何でもできますから。素振りも、トレーニングも、ランニングも。キャッチボールだって相手さえ見つければ」
一人になる時間をどう過ごすかが、重要だというわけだ。
「鈴木は真っ暗な中で素振りをしながら、バットが空を切る音で自身の好不調を測り、試合でイメージ通りのバッティングができなかった時の理由を考えたりしているようです。対戦した投手の変化球を思い出しながら、素振りをしたり」(関係者)
鈴木が米球界からも高く評価されるようになったのは、「一人の時間」を有効に使ってきたからだとも言えなくはない。
前出の米国人ライターが今オフの米FA市場について、こう予想していた。
「労使協定の話し合いですが、ナ・リーグも来季からDH制を採用することも決まりそうです。そうなると、鈴木のように走攻守の3拍子揃った選手よりも、『打つだけ』の選手が先に交渉をまとめていく可能性もあります」
焦らず、じっくりと相手球団の出した条件を熟考する必要がありそうだ。
代理人任せにし、後に生活環境で苦労した選手も過去にいた。昨年の巨人・菅野のように考えすぎて決断できなかったケースもある。一人の時間を有効に使える鈴木は、何を基準に移籍先を決めるのだろうか。(スポーツライター・飯山満)