鮮やかなエメラルドグリーンのグラブを手にし、あごひげをたくわえたニュースタイルで、先発として2019年8月23日のジャイアンツ戦以来のマウンドに立った東。初回は2番に入っていた鳥谷敬からスライダーで見逃し三振を奪うなど1安打ピッチングで上々の立ち上がり。2回には右左関係なく伝家の宝刀・チェンジアップを低めに落とし、圧巻の三者連続の空振り三振に切って取った。ストレートはMAX146キロをマークし、平塚に集まった熱心なベイスターズファンから声援代わりの大きな拍手でたたえられた。
リハビリに明け暮れた昨年1年間。年末の契約更改では「野球を見るのがツラい」との感情も芽生えたと明かしていた。さらに「術後4カ月後の6月20日に、初めて5メートル先の壁にビビりながらボールを当てる」ことから始めた際は「投げられるようになるのか」と半信半疑にもなった。
しかし「10月後半にはブルペンで立ち投げ、12月中旬にはキャッチャーを座らせて投げる」とのプランに沿って調整を続けると、4月下旬にキャッチャーを座らせてブルペン入りし、数日後には変化球も交えてピッチング。5月上旬にはバッター相手に投げることができるようになったとTwitterで報告。当初のプランからは多少遅れたが「開幕一軍に合わせて無理するのではなく、確実に戦力になれるように焦らずしっかりとやっていきたい」との目標に沿って調整し、この日の好投につなげた。
復帰に関して「688日ぶりに実戦復帰しました!トミージョン手術から、約1年5ヶ月!
長く先の見えないリハビリで、一喜一憂、一進一退を繰り返しながら、ついにこの日を迎えることが出来ました。野球ができる喜びを忘れずに頑張っていきたいと思います!」とファンにも報告し、ネット上には喜びのリアクションがあふれていた。
同じくトミー・ジョン手術を受けた田中健二朗も支配下契約を勝ち取った。苦難を乗り越えさらに強さを増した彼らが、一軍の舞台で躍動する日が待ち遠しい。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘