グアテマラのペテンにあるラグナ・デル・ティグレ国立公園、マヤ生物圏保護区内にある古代都市エル・ペルー・ワカのピラミッドから出土したもの。ワカの統治者が埋葬された石積みの玄室内に、遺体をアーチ状に取り囲む形で配置されていたという。
その土偶は種類も様々で、非常に見事な造形をしていた。盾を誇らしげに構える戦士の女王、地位にふさわしい豪華で多層な織物を身にまとった王の生前の姿、儀式に欠かせない幻覚剤を投与するための浣腸用注射器を持った王位継承者、神聖な儀式を執り行うダンサーや書記、女性たち。そのいずれもが格好や装飾品、持ち物などが分かる状態で作られていたのである。
女性のシャーマンと思われる土偶は恍惚の遠ぼえで顔をゆがめていたし、雨乞いのためにボクシングの儀式を行う人物は、なんと取り外し可能なヘルメット型のかぶとをつけていた。ホラ貝のラッパを持ち、鹿のヘルメットをかぶった人物をかたどったものもおり、このラッパは冥界への扉を開くための音楽を演奏するためのものだったと考えられている。あまりに精密に作られているため、まるで古代のアクションフィギュアだと言われているそうだ。
この土偶たちは王の魂を冥界に送り、再生を願うものに埋められたものと考えられている。当時の人々が超自然的なものにアクセスし、より深い力を引き出そうと考えていた様子がうかがえるという。
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このエル・ペルー・ワカ遺跡では、他にも32個の陶製容器、緑石製の耳飾り、ヒスイ製のモザイクマスクなど、古典期の墓に見られる多くの遺物が出土されている。埋葬された支配者の衣服だけではなく、埋葬前に遺体を包んでいた布の破片も発見されている。これは考古学的には存在が考えられていたものであったが、実物が発見されるのは初めてとのこと。
エル・ペルー・ワカ遺跡の発掘は2003年頃からアメリカとグアテマラの研究者による共同発掘調査が行われており、今回の発見は2006年から始まった調査のもの。遺跡の周辺は略奪や環境破壊が及んでおり、この発掘調査を踏まえて遺跡のある周辺地域の考古学的遺産や自然環境の保存につなげたいと研究者らは語っている。
(山口敏太郎)
参考記事
Archaeology at El Perú-Waka’: A Maya Ritual Resurrection Scene in Broader Perspective(Unframed)より
https://unframed.lacma.org/2017/09/21/archaeology-el-%C3%BA-waka%E2%80%99-maya-ritual-resurrection-scene-broader-perspective