「オジオズ」は、結成21年の漫才コンビ。最強漫才師を決める「THE MANZAI」では12年と13年に決勝進出を決めたが、安定したテレビ露出につながらず。キャリア15年以下しかエントリーできない「M-1グランプリ」の受験資格を失ってしまった。
およそ2年前、マネージャーが交代したタイミングでレギュラー番組はゼロに。そのとき、マネージャーから篠宮はギャグの量産、相方の高松新一は司会に役立つ言葉・漢字の習得という課題を与えられた。高松は、漢字検定3級合格を目標に勉強。その結果発表ライブで、「実は僕も受けてました」というボケをかますために、篠宮も内緒で受験していた。すると、当の高松が不合格、シャレで受けた篠宮が合格した。
昇級をめざして学んでいたころ、子どもと遊ぶ動画をツイッターに上げては、「かわいいね」をもらっていた。それを見て、「お前のツイッターは面白くない。芸人だったら『おもしろいいね』が欲しいんじゃないのか」とケツをたたいたのが、放送作家・鈴木おさむ。悔しさを晴らすべく、それまでYouTubeに上げていた漢字の書き方をギュッと秒に縮小して、「鬱」の書き方を独特のイントネーションでツイッターに上げた。
>>コロナ禍で仕事ナシの芸人、磨いた一芸が仕事になるもギャラ半減? 事務所に「持っていきすぎ」と不満<<
すると、375万回再生をたたき出し、11万を超える「いいね」を獲得。人気の火は一気に拡大し、情報番組で取り上げられ、密着番組まで入った。翌20年2月、「秒で暗記! 漢字ドリル」を出版すると、1度目の緊急事態宣言(4月7日~)のタイミングとぴったり重なり、売り上げが爆上がり。Amazonの「学生の勉強法ジャンル」の売れ筋ランキングで1位を獲得し、日経トレンディの「2020年上半期ヒット商品」に「鬼滅の刃」と並んでランクインした。すでに、同シリーズの「小学校1・2年生編」、「書けたらカッコイイ 漢字が秒で覚えられる!」も出版。合計発行部数7万部を超えるベストセラーとなった。
対して、本来の“素材”をコロナ禍でパワーアップさせた芸人もいる。「iPhone芸人」「家電芸人」の肩書で活動しているかじがや卓哉だ。
家電製品総合アドバイザーの資格を持つかじがやはこれまで、新商品が出るシーズンに引っ張りダコだった。さらに昨春以降は、コロナでリモート学習・仕事が主流となり、素ごもり需要が増加。家電製品の売り上げと同時に、かじがやへのオファーも右肩上がりとなった。それまでの生業だったiPhoneでは、関連書籍を7冊も出版(2月刊行も含む)。「スゴいiPhone」シリーズは18、19年、日本でも最も売れたiPhone関連本という。
コロナ休業・倒産は、今なお歯止めがきかない。しかしその一方で、増益・増収したジャンルや人もいる。漢字の篠宮、家電のかじがやは、成功のモデルケース。コロナでガッポリ……そんな芸人もいるのだ。
(伊藤由華)