台湾のデジタルテレビ局「MOMO TV」が阪神タイガース戦の放映権を獲得したのは、既報通り。対象はオープン戦、公式戦、クライマックスシリーズだが、「阪神の主催ゲームに限って」となっている。
「チェン・ウェイン投手の加入で決まったようなもの。台湾では日本のプロ野球中継は人気コンテンツの一つです」(スポーツ紙記者)
台湾出身の元メジャーリーガーで、千葉ロッテと契約し、昨季終盤戦で復活をアピールしており、当地の野球ファンは大きな関心を寄せていたようだ。
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そんなチェン獲得の際、「台湾からのTV放映料」と新たな収入増を予想する声も聞かれた。しかし、気になる点もある。同局のセールストークに「チェン対巨人・陽岱鋼」なる構図が使われたことだ。
「台湾での日本のプロ野球中継の先駆け的な存在は、パ・リーグです。パ6球団が共同出資して立ち上げた会社が先頭に立って各方面に働きかけました。今でこそ、セ・リーグのことを知っていて、特定選手のファンもいると聞いていますが」(前出・同)
一連のコロナ禍で今季の観客動員数も回復できるのかどうか、まだ分からない。その意味では台湾での放映権獲得は大きいが、セールストークにあった対巨人戦の初試合は、4月6日。おそらく、ここが台湾での阪神戦のペナントレース中継のスタート日となるだろう。同試合にチェンを投げさせなければならない。「4月6日・チェン先発」とすると、開幕ローテーション入りさせる6人の先発投手を登板させる順番がちょっと難しくなってくる。
矢野監督は西勇輝の開幕投手をほのめかしています。こちらは決定でしょう」(プロ野球解説者)
予定通りにペナントレースがスタートすれば、開幕戦は3月26日の金曜日。今年の阪神は先発ローテーション入りを狙う投手に厚みがあり、「藤浪の脱落説」も出るくらいだ。
「故障のない限り、チェンの開幕ローテーション入りは間違いありません。中6日の通常間隔でチェンを4月6日に投げさせるとしたら、3月30日が初先発となります。同日は広島カープの主催なので中継はできませんが」(前出・同)
3月30日は「火曜日」だ。ペナントレースの長丁場を戦う上で、もっとも重要となってくるのは、実は火曜日なのだ。火曜日から6連戦となるケースが多く、その初戦を取るかどうかで、チームのモチベーションは大きく変わってくる。つまり、矢野監督はチェンにチームの命運を託すことになる。
「どの球団も5月ゴールデンウィークの変則日程や、その後の交流戦の間にローテーションを入れ変えて、エースが火曜日に投げるようにします。阪神もそのつもりだと思いますが」(在阪記者)
昨季の敗因は、序盤戦の連敗。スタートダッシュに成功し、優位にペナントレースを進めていきたいというのが矢野監督の構想であり、そうなると、チェンの好不調がそのままチームの状況に直結しそうだ。チェンが陽岱鋼や巨人打線に打ち込まれるようなことになれば、台湾の野球ファンも阪神を応援しにくくなる。
毎年の話だが、外国人選手の好不調で阪神のペナントレースが決まってしまう。このギャンブルみたいな状況を変えることができないのだろうか。(スポーツライター・飯山満)