120試合制の今季のちょうど半分を終えた8月30日、阪神が延長戦を制して29勝28敗3分で「貯金1」とした。開幕から連敗スタートとなった状況を考えると、巻き返しに成功したわけだが、チーム関係者たちの表情は明るくない。ちょっと気難しそうな雰囲気だった。
「12球団は弁護士、経営コンサルタントなどの専門家を交え、今季、どれだけの損失が出るのか、計算してもらいました。阪神にも深刻な予測が出されました」(球界関係者)
各球団とも、例年と比べ、60億円強の損失が出るという。
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通常のペナントレースは143試合。23試合も少なくなった上に、開幕からしばらくは「無観客試合」で、7月10日からようやく観客を迎えることが許されたが、「上限5000人」と決められた。「8月1日以降、収容人員の50%まで入場者数を引き上げる」との見込みも立てられていたが、都市部を中心に新型コロナウイルスの感染者数が増え続け、現行の「上限5000人」は9月末まで再延期されることになった。
この上限5000人の規定を指して、こんな声も聞かれた。
「仮に10月1日から解除されたとしても、30試合程度しか残っていません。無観客試合が15試合、『上限5000人』で約80試合、プロ野球界は90試合強の入場者収入を抑えつけられたことになります」(ベテラン記者)
特に、阪神は大きな痛手を被ったようだ。昨季のトラの観客動員数は309万1335人。1試合平均は4万2935人だ。「上限5000人」を1試合平均の数値に重ねると、毎試合約3万8000人分の入場者収入を失っている。
「昨季、12球団トップの観客動員数を集めたのは阪神ですよ。終盤戦でAクラス入りを懸けた試合が続き、ファンを飽きさせませんでした。昨季と今季では入場者収入に大きな差がありすぎて…」(在阪記者)
各球団とも、この経営的危機をどう乗り切るかを模索中だ。手っ取り早いのは選手のリストラだろう。阪神はベテランの多いチームでもあり、投手陣では40歳の藤川球児、捕手では37歳の岡崎太一がいる。
「福留孝介(43)と糸井嘉男(39)の去就が気になります」(前出・同)
今季の福留は打撃不振に陥っている。打率1割6分9厘(8月30日時点)で、ベンチスタートとなる日も多くなった。推定年俸1億3000万円という金額も考えると、肩を叩かれてもおかしくはない。
「今春のキャンプ中、若手に打撃指導をする場面も多く見られました。中堅、若手が伸び悩んでいることを気に掛けていました」(前出・同)
関係者によれば、ここ1、2年の福留はふくらはぎにサポーターをしてからユニフォームを着ているという。同個所に故障歴もあるからだが、アスリートの世界では「ふくらはぎ痛=引退カウントダウン」とも解釈されている。体のケア、怪我防止とは言え、こうした光景を見せられ、球団も「そろそろ…」と考え始めたのかもしれない。
福留が移籍してきて8年目、そのリーダーシップと野球に関する知識、勝負カンの鋭さは、矢野燿大監督も認めている。こんな比較は失礼だが、その影響力は鳥谷以上とも言われてきた。経営難で人員整理に走るか、それとも、将来の指導者を喪失しないためにも完全燃焼させてやるか…。入場者収入の大幅ダウンは、トラの将来にも影響を与えそうだ。(スポーツライター・飯山満)