そんな浅村を見て、こんな声も聞かれた。「4番バッターのイメージも変わりつつある」と――。
「昨季の浅村は33本の本塁打を放っていますが、彼の長所はバットコントロールと出塁率の高さです。昨季は打率2割6分台でしたが、四球を『93』も選んでおり、数字には表れないところでもチームに貢献しています」
打撃コーチの経験も持つプロ野球解説者がそう評していた。出塁率が高いということは、3番バッターのタイプである。
「ソフトバンクも打率を稼ぐタイプの中村晃を4番に置いています。こちらは故障者が続出し、工藤公康監督が考え抜いた末に編み出した打順ではありますが」(前出・同)
しかし、楽天は主力選手から故障者を出したわけではない。三木肇監督があえて決めた新打順である。
「浅村は西武時代にも4番を務めた経験がありますが、その時はやはり主力選手の故障があっての代役でした。当時、浅村は『ボクでいいのかどうか…』と戸惑っていました」(ベテラン記者)
昨季までの楽天の4番は島内、ウィーラー(現・巨人)、ブラッシュなど、言わば本塁打の期待できる長距離タイプだった。主に3番に入っていた浅村を4番に固定した理由は「チャンスに強いこと」にあるようだ。
三木監督が「4番・浅村」を示唆したのは、6月4日の練習試合後だった。春先のオープン戦からさまざまな打順をテストしていたが、「3番はスピード感があって、出塁率が高い選手。4番はチームの顔。そういうことを考えると今日の試合は…」と言って、同日の4番だった浅村を称賛した。
浅村はスピード感、出塁率という3番バッターの要素を全て持っている。しかし、「浅村は状況に応じて、右方向に打って走者を進める打撃もできます。三木監督が最も求めていたのは、走者を溜めた場面での適時打。たとえホームランでなくても、得点を挙げる可能性の高いバッターを4番に置き、打線のつながりを重視しました」(球界関係者)
「打線のつながり」という意味では、ソフトバンクの中村も同様だ。
巨人・岡本、西武・山川、日本ハム・中田のように、ホームランバッターを4番に置くチームも多い。だが、長打ではなく、ヒットで得点を挙げることに長けた4番バッターも脅威だ。浅村はリーグトップの41打点について、「前の打者のおかげ」と語っていた。そう言えば、得点には欠かせない犠打のリーグトップも楽天の鈴木大地だ(注・オリックス大城と同数の1位)。
切れ目のない打線、“総力戦”で得点を積み重ねていく三木野球はまさに脅威である。(スポーツライター・飯山満)