さて日本の放送事故史上、最も多くの視聴者の注目を集めた事故といえば、やはり1993年3月15日の「石鹸工場爆発事件」ではなかろうか。
これは当時、日本テレビ系で放送されていた朝の報道番組『ジパングあさ6』でロケをしていたアナウンサーやスタッフ計6名が工場の爆発に遭遇した事件だ。
>>ドッキリでタレントがブチ切れ!?その時カメラは……?<<
3月15日午前10時15分ごろ、日本テレビの関谷亜矢子アナウンサーら番組スタッフ一行は東京都豊島区にある石鹸工場を取材していた。
この工場は世界一純度の高い石鹸を作ることで有名で、『ジパングあさ6』はその工程をカメラに収めようとしたのだ。
テキパキとロケを進める関谷アナウンサー。大きなミキサーの中では、石鹸の材料となる水酸化ナトリウムと廃油がドロドロに混ぜられていたのだが、途中で手順を間違えたのか、化学反応で何倍にも膨張した材料がミキサーの中からあふれ出てきたのだ。
石鹸の作り方など当然知らない関谷アナはその光景を見て「うわ!すごい」「とぐろ巻いたみたいになっている!」と笑いながらレポートしていたのだが、その瞬間、膨張した石鹸が真っ赤な火を放ち大爆発したのだ。
悲鳴をあげながら逃げる関谷アナとスタッフたちはすぐに工場から脱出。ロケ隊のほか工場の従業員たちに怪我はなかったが、工場は全焼。さらに近隣の住宅3棟を焼いてしまう大事故となったのだ。
だが、この事故が本当の伝説とされているのは、翌日放送の同番組がスゴかったからだ。なんと番組冒頭から事故に遭った関谷アナが生出演。「えー、わたくしきのう、取材中に火災事故に遭ってしまいまして」「(事故で燃えたため)髪型が少し変わってしまったのですが『ジパングあさ6』は変わらずに頑張りたいと思います!」と明るい笑顔で番組に復帰し、事故の映像を流したのだ。
本当ならショックで寝込んでも仕方がないような事故である気もするが、その不屈の精神力は、まさに女子アナ魂と言えよう。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)