6月1日にキャンプ再開。メジャーリーグの活動再開に向けて動き出した。これまでも、アリゾナ州など3州に30球団を集結させるなどの案も出ていたが、具体的に「日時」が示されたのは、これが初めてだ。ペナントレース開催に向け、MLB機構と同選手会の話し合いはかなり進んでいるのだろう。
それと同時に、興味深い情報も飛び込んできた。
「1試合でも多く消化させたいからでしょう。今季に限り、『1試合7イニング制』の変則ルールを導入する案もある、と」(米国人ライター)
中学生の軟式野球部の試合みたいだが…。しかし、米国内では「7イニング制」に強い反対は出ていないそうだ。この7イニング制をプラスに変えそうなのが、マエケンこと前田健太投手だ。
前田は先発投手層の厚いドジャースでは昨シーズン中盤以降、リリーフに回ることも多かった。ミネソタツインズへのトレードは、“先発専念”のチャンスではあるが、前田自身も先発枠を勝ち取るため、ピッチングスタイルや投球フォームをマイナーチェンジさせてきた。その一例が「100球スタイル」だ。
「前田は先発完投型の投手として知られていました。9イニングを投げるペース配分、ストレートの力加減がありました。しかし、中継ぎ、クローザーとの完全分業制が確立したメジャーでは、『9イニングを投げるスタイル』は不要です。前田は初回から飛ばすスタイルに変えています」
広島時代を知るプロ野球解説者がそう言う。
また、急斜面の米国のマウンドに適応させるためだろう。歩幅を狭くしている。
「ツインズへのトレードですが、ドジャース退団は前田自身が希望したものでした。『トレードの話があったら』とフロントに申し出ていました。シーズンを通して先発でやりたいとする希望と同時に、やり切る自信もあったのでしょう」(前出・プロ野球解説者)
メジャーでは、投球数が100球を超えた時点で、好投していても「交代」という雰囲気になる。しかし、前田には低めに変化球を集める技術もあり、「100球余りで6イニング目」という試合も少なくなかった。
仮に7イニング制が決定したとしても、最終イニングを任されるクローザーの負担は変わらない。7イニング制の導入が話し合われている理由は、選手の負担軽減だ。試合数を多く行うため、連戦、ダブルヘッダーなどの日程を組み込むためであり、こうした状況を考えると、「前田が投げる試合はクローザーを休ませ、完投させよう」となりそうだ。
日本プロ野球界で先発ローテーション入りする投手は、実際に試合で投げてみて、自身の好不調を見極めるタイプが多い。悪ければ悪いなりに投球スタイルを建て直し、ウイニングショットの変化球を変えるなどして修正していく。前田もそのタイプだった。7イニング制の特別ルールによって、カープ在籍時代の「先発完投のマエケン」が見られそうだ。(スポーツライター・飯山満)