『FIRE PRO WRESTLING WORLD presents STARDOM The way to major league 2020』
▽8日 東京・後楽園ホール 観衆1,519人(超満員)
女子プロレス団体スターダムが8日、毎月恒例の後楽園ホール大会を開催した。今大会は札止めにこそならなかったが、3か月連続で超満員の動員をマーク。これは、現在の女子プロレス団体ではスターダム以外にはなし得ない記録である。
しかし、今大会は前日の7日に、メインイベントで岩谷麻優と女子プロレス頂上決戦を行う予定だったディアナのSareeeが、急性腸炎及び感冒による発熱のため欠場という大アクシデントが発生。ロッシー小川エグゼクティブプロデューサーは「1日カード問題に費やした」ことを明かしており、他の関係者も「どうなるかと思った」と前日のアクシデントを振り返っていた。そんなピンチを救ったのは、6日に突如スターダム道場に現れ、岩谷にランニング・ツリーを伝授した長与千種だった。ロッシー氏と千種は、クラッシュ・ギャルズのマネージャーをロッシー氏が務めていたこともあり、現在も「付かず離れず」の関係だという。
“戦友”のピンチに、千種はスターダムからマーベラスに移籍して、じっくりと育てた愛弟子の彩羽匠を岩谷の相手として送り出した。彩羽は千種からランニングスリーを伝授されており、岩谷に対してジェラシーが高まっていただけに、彩羽は「いつかはやらなきゃいけない相手」として、古巣への出陣を試合の1日を切った時点で決めたのだ。岩谷は1期生、彩羽は4期生だが、2人は同学年。Sareeeとのドリームマッチは消滅してしまったものの、彩羽が千種のイズムを背負って、岩谷の前に立つ意義は大きい。
千種が本部席で見守る中、試合は握手で始まったが、内容は壮絶なものがあった。“女子プロレス界の棚橋弘至”こと岩谷は受けっぷりに定評のある選手だが、彩羽の攻めはすべてが重く厳しいものがあった。その都度、ゾンビのように立ち上がってくる岩谷だが、必殺のムーンサルトプレスをカウント2で返された。2段回式のドラゴンスープレックスもランニングスリーも決められない。彩羽はパワーボム系の技で岩谷の体力を奪っていくと、最後は重いキックのコンビネーションから、意地のランニングスリーを決めてカウント3を奪取。敗れた岩谷は対戦を受けてくれた彩羽に感謝の意を述べると、赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)を賭けての再戦をアピール。彩羽もこれを受諾したが、ここで鹿島沙希率いる大江戸隊が乱入。鹿島が岩谷に挑戦アピールするも、岩谷は「興味ない」と一蹴。すると再び大江戸隊が岩谷を襲撃するが、彩羽が1人で蹴散らし場内は大喝采。最後は彩羽が岩谷と一緒に6年ぶりにスターダムの大会を締めた。
インタビュースペースで、彩羽は岩谷を「100年に1人の逸材」と認めた上で、「こんな自分が赤いベルトに挑戦していいのか分かりませんが、挑戦するからには本気で取りに行きますよ。スターダム、面白くなりますよね。そしたら。ブシロードさんが付いて、1団体だけトップにのし上がろうとしている。そこを引きずり落とす団体がいたら面白くなるんじゃないですか?長与さんが仕掛けるって言ってます。自分もこういった意味で仕掛けていきたいと思います。ホントにベルト獲りますよ」と赤いベルト獲りに向けて仕掛けていく考えを明らかにした。
すると、ここに千種が現れ、「いい試合だったよ」と彩羽の前でこの試合を評価。「今日の岩谷麻優のやられっぷりの良さは天下一品でしょ!あそこまでやられたら力尽きるの仕方ない。ランニングスリー決まった。それはもう仕方ない。ただ、ランニングスリーはあくまで挑発から始まったわけじゃなくて、たまたまマスクが被りたかっただけ。岩谷麻優のマスクがカッコよすぎて、あの12月8日(マーベラス後楽園大会)に被りたかっただけ。それを彼女が勘違いしたことから始まっているんだけど、ただ火を点けたのは確かだし、でも技はランニングスリーだけじゃないから。彼女に合う技はいっぱいある。でもあの子は練習しなくても出来る。でもスターダムのゴールデンルーキーと言われた彩羽匠は叩いてナンボだから。叩いて叩いて叩いてやっと輝きを増す人間だから、ある意味ここは天才を目指すところだよ」と、岩谷、彩羽、そして2人を女子プロレスラーに導いたスターダムについて熱く語っている。
ダメージが大きい岩谷は「背中、お腹、頭、首腕、もう徹底的に全部やられて、メチャクチャ、メチャクチャぼろぼろになりました。今回は、今回はちょっと、ボロボロになりすぎて、最後立ち上がることが出来なかったんです」と激闘を振り返るのがやっと。コメント中、ジャングル叫女から2.23愛知・名古屋国際会議場イベントホール大会での挑戦をアピール。岩谷は「断る理由はない」としてこれを受諾。鹿島からの挑戦表明もあることから、彩羽との再戦は少し期間を置いてからになりそうだ。もちろん、それまで岩谷が防衛し続けなければ、「ネクスト」はない。
ロッシー氏も「(再戦は)タイミングを見計らって」と語っていることから、この試合がいかに奇跡的に組まれたのがよく分かる。しかし、ブシロードの女子プロレス界参入に対して誰よりも早く反応した千種が、こんなに早くブシロード傘下のスターダムと交わるとは思わなかった。ピンチをチャンスに変えたスターダムは、新体制後、初のビッグマッチ4.29東京・大田区総合体育館大会に向けてさらに勢いを加速させていくことだろう。
(どら増田)