その意味で、潜在的な相撲ファンの関心が高まるかと思った今場所だが、八百長問題のツケは大きかった。初日には東京場所の初日としては、85年1月に現在の国技館が開業以来、史上ワーストとなる入場券の売れ残り最多記録(3709枚)をマ−ク。
さらに、12日の2日目では入場券が実に5682枚も売れ残り、今年初場所3日目の残券5118枚を上回って、現国技館開業以来のワースト記録を塗り替えた。
2日連続で史上ワースト記録をつくるなかで、終盤戦での動員アップに期待がもたれていたのが、大関・日馬富士(伊勢ヶ浜)の綱獲りだった。現在、横綱は白鵬(宮城野)ただ1人。日本相撲協会としては、どうしても次の横綱が早々にほしいのがホンネ。日馬富士が先の名古屋場所で優勝し、横審は昇進基準を緩めることすら示唆していた。
ところが、当の日馬富士は15日の5日目で早くも3敗目を喫し、前半戦で綱獲りへの夢はついえた。横審幹部も昇進見送りを宣言した。
今場所最大の焦点だった日馬富士の綱獲りが前半戦で消滅したことは、終盤戦の観客動員に大きな影を落としたといえる。不入り続きで頭を抱えている協会にとって、日馬富士の不振は背信行為。まさに、今場所最大のA級戦犯といわれても仕方があるまい。
(落合一郎)