まずは昨今の流通業界について、専門誌記者が説明する。
「最大手のイオンは、ここ数年ジリ貧に苦しんでいましたが、10月、'17年3〜8月期連結決算で営業利益が前年同期比18%増の850億円で、11年ぶりに過去最高を更新した。しかし、問題は中身で、手放しでは喜べない。全体の利益は改善されたが、事業の柱のGMSが104億円の赤字で、ダイエーなどの食品スーパーの部門も31%の減益。この不振を他の部門でカバーして何とか最高益を出したものの、悩ましいところです」
今回、ドンキと連携するユニー・ファミリーマートHDも、GMSの売り上げ減少に苦戦してきた。2017年2月期の業績では、ファミリーマートなどコンビニ事業の営業利益は93億円、GMSは90億円と、ほぼ同等となっている。
「しかし、中期の見通しで'20年2月期にコンビニの営業利益が450億円まで飛躍的に拡大する一方、GMSは150億円と微増。それだけに、GMSの収益改善はユニー・ファミリーマートHDにとって急ピッチでメスを入れなくてはならない課題だったのです」(同)
そもそも、なぜGMSの売り上げが低迷しているのか。
「総合スーパーは日用品、衣料品、雑貨、そして食料品などの、あらゆるものを5000平方メートルから1万平方メートルぐらいのスペースに詰め込み、一時は戦後の豊かな暮らしの象徴とさえ捉えられ、右肩上がりで業績を伸ばしてきた。しかし、近年はネット通販に押されていることに加え、ユニクロやニトリなどの専門店の台頭、超安価なディスカウントストアの存在がある。また家族連れは、大型ショッピングセンターに流れ、GMSは中途半端な位置づけにより客足が遠のいてしまったのです」(経営コンサルタント)
今回のユニー・ファミマHDとドンキの提携もそうした流れの結果だというが、ドンキに白羽の矢が立てられた理由を、流通関係者が解説する。
「ドンキは倒産したGMSの長崎屋を'07年に買収、再生させ、『MEGAドン・キホーテ』として大成功させた実績がある。それまで、長崎屋は様々な企業が再建に名乗りを上げるも失敗に終わっていたが、ドンキが乗り出すや一気に長崎屋時代の2倍、3倍の売り上げを叩き出したのです」
その秘密はどこにあるのか。先の経営コンサルタント関係者は、こう言う。
「一つはバラエティー性とオリジナル性の高いドンキ商品と総合スーパーの日用品がマッチした、何でも揃う店舗空間づくり。品揃えや安さだけを求めるなら、アマゾンやメルカリなどネットや専門店で十分ですが、ドンキは行けば見たこともないオリジナル商品が発掘でき、飽きずに何時間でもいられる。一方で、GMSの強みにより生活必需品を揃えることもできる。そのため、長崎屋には従来、足を運ばなかった若い世代が増えたのです」
加えて、時間にも余裕があるシルバー世代も訪れることにより、売り上げを飛躍させたという。
もう一つは、優れモノの商品開発だ。
「ドンキは今年6月、50型4Kテレビを、大手メーカーの商品の約半額となる5万4800円で販売し、わずか1週間で完売となり話題となった。10月からその第2弾も販売中ですが、ドンキは健康グッズにしてもパーティーグッズや家電にしても、ドンキにしかない商品の開発に力を入れている。しかも、安かろう悪かろうではなく、メーカー品と比較しても遜色のない商品ですからね」(同)
それらは、ネットでも、他店でも手に入らない。つまり、客に店舗に足を運ばせる理由を作り、“ついで買い”も促す。
この空間力と商品力がマッチしたディスカウントショップが、国内の老若男女ばかりか、インバウンドも引き付ける。それが、ユニーのドンキご指名の背景というわけだ。もちろん、ドンキ側にもメリットはある。
「それまで手薄だった東海地方中心に、210店舗を展開するユニーは大きな魅力。ドンキは今夏に、『2020年ビジョン』を発表しており、その中で“'20年で500店舗、連結売上高1兆円企業”を目標に掲げていた。ユニーとの提携でそこに大きく近づく」(同)
ドンキは現時点で海外合わせ368店舗、売上高は'17年8月決算で8287億9800万円。今後、どこまで無敵ぶりを見せるのか注目だ。