西岡はマイナーリーグ(3A)で開幕戦を迎えた。ポジションはショートではなく、『セカンド』だった。一時は「3年契約を破棄し、日本に帰って来る」と伝えられ、本人も「帰りたい」とこぼしているという。日本帰還は時間の問題だと思っていたが、それと同時に、一発逆転のメジャー復帰と即スタメン出場の可能性もゼロではないと見ていた。しかし、ツインズの新GMのテリー・ライアン氏はそんな一縷の望みもバッサリ切り捨ててしまった。
「西岡の不幸は昨年11月に始まっていたのかもしれません。チーム低迷の引責で西岡のポスティングで落札したビル・スミスGMが解任されたから? いや、後任のGMがテリー・ライアン氏だったことが影響していると思います。ライアン氏は94年から07年までツインズのGMだったんです。4年ぶりの復職であり、ツインズの内情を知り尽くした人なんです」(米国人ライター)
何故、ライアン氏の復職が西岡にとって不幸なのか−−。
氏は14年間、ツインズのチーム編成に携わっていたため、マイナーを含む現チームの選手の力量も把握している。実は、マイナーの開幕戦で西岡に「セカンドを守らされたこと」が、大きな意味を持っていたという。セカンドを守らされたことは、事実上の“戦力外通告”でもあった。
「マイナーのショートに入ったのは、成長著しい若手のブライアン・ドージャーです。ドージャーは将来のツインズを担う逸材として、ライアンGMが目に掛けてきたホープです」(前出・同)
同GMは「ハーディの後継者」なる言い方もしているそうだ。
ツインズは昨季、63勝99敗と歴史的な大敗を喫した。故障者続出が敗因とされるが、ライアンGMは大型遊撃手のJ.J.ハーディをオリオールズに流出させてしまったことが『チーム敗退の始まり』と分析し、再建の一環として正遊撃手を見つけようとした。
同GMが獲得したのはジェイミー・キャロル遊撃手。キャロルは「4年連続出塁率3割5分強」の好選手だが、今季38歳になる。そう、「向こう3年以上を託せる選手」ではない。近々の『ドージャー頭角』を見越してのキャロル獲得だった。
「セカンドのレギュラーは、アレクシー・カシーヤ。成長株の1人であり、今季安定した成績を残せば、完全なレギュラーとして扱われるはずですが、好不調の波が大きい。ロン・ガーデンハイア監督はまだ不安を持っているようです」(現地特派員の1人)
ライアンGMが描くチームの近未来構想は『二塁・カシーヤ、遊撃・ドージャー』だが、育成よりも勝利を優先しなければならないときも来る。そのとき、西岡の名前が再浮上しているのでは…。一発逆転で『メジャー復帰&即スタメン』もあり得ると考えられた理由は、ここにある。
しかし、西岡はそのチャンスも手放してしまったようだ。
「キャンプ、オープン戦で西岡は凡ミスを連続し、首脳陣は『野球に集中できる精神状態にない』と判断しました。離婚訴訟で野球に集中できていない、と。一方、ドージャーは今季のシーズン半ばにはメジャーに昇格してくると思われます」
「日本に帰りたい」と弱音を吐いた西岡がまだマイナーに残っている理由だが、「高額な離婚慰謝料を稼ぐため」と、地元紙は揶揄している。西岡は「総額925万ドル・3年契約」だから、これからずっとマイナーでも、今季と来季も約300万ドルずつ(約2億2500万円ずつ)が支払われる。契約期間が満了するまでマイナーで過ごすことになれば、井川慶の二の舞になってしまう。
レッドソックスは、守備面で「遊撃手と捕手が弱い」とされている。そのレ軍を指揮しているのは、前千葉ロッテ監督のボビー・バレンタイン氏だ。「西岡に興味を示してくれれば」とも思うのだが…。
※メジャーリーグの選手、監督首脳陣等のカタカナ表記は、ベースボールマガジン社刊『週刊ベースボール』(2012年2月13・20日号)を参考にいたしました。