「ダルビッシュの実力がこの程度だとは、アメリカのファンも思っていません。でも、4点を失った初回を見て、『ダルビッシュでも緊張するんだな。コントロールに苦しむ場面があるんだ』と思いました」
米国メディア陣の1人がそう言う。「公式戦初登板の緊張感」が大量失点の原因かどうかは決めつけられないが、ダルビッシュの『ホロ苦デビュー』は、藤川の評価にも影響を与えていた…。
海外FA権取得とほぼ同時に、『オリオールズが藤川の獲得に向け、調査に乗り出す』との一報もあった。しかし、大多数のメジャー球団は一歩引いた見方をしている(15日時点)。
「藤川? 『直球の速い右のリリーバー』なら、マイナー、中南米にたくさんいますからね。ダルビッシュがポスティングに掛かるまでの間は、メジャースカウトが大挙して日本にやってきましたが、今回の藤川にする調査はさほど熱心ではありません。今は静観しているといった感じです」(米国メディア陣の1人)
在京球団スコアラーの1人もこう続ける。
「去年までの話ですが、阪神対中日戦ではメジャースカウトをよく見掛けましたよ。でもね、チェン・ウェイン(中日−現オリオールズ)が降板すると、ほとんどのスカウトが引き上げてしまいました。メジャースカウトは合理的で目的以外の視察はやらないのかもしれませんが…」
藤川に興味がないのだろうか。いや、阪神球団が藤川をポスティングに掛けるのを強行に拒んできた経緯を知っていて、「早期のメジャー挑戦はない」と判断し、『視察』を先送りしていたのかもしれない。
藤川は第2回WBCでは4試合に登板し、防御率0.00。前年3月に行われたアスレチックスとの親善試合でも好投し、対戦した打者たちも「ストレートの伸び」を称賛していた。「藤川は米国でも十分にやっていける」と見るNPB関係者はかなり多い。
「今さらですが、藤川がメジャーを意識しているのは間違いありませんよ。4月5日のヤクルト戦ではいつものセットポジションではなく、ワインドアップ・モーションをテストし、今年はカットボール、ツーシームなどの変化球の割合も増えています。メジャーを意識してのマイナーチェンジですよ」(前出・在京球団スコアラー)
藤川の去就において、キーマンになるのは、おそらく、元阪神のトーマス・オマリー氏だろう。現在、オマリー氏は松井秀喜、ダルビッシュ有の代理人としても知られるアーン・テレム氏の事務所に所属している。「新たな日本人メジャーリーガーの発掘」が主な仕事で、当然、藤川とも面識はある。
「オマリー氏が藤川と接触? いや、彼は米国メディアにマイクを向けられると、『藤川はメジャーでは厳しい』と話してきました。でも、藤川の直球のスピード、浮き上がってくるような軌道は、メジャースカウトも一目置いています。とはいえ、ストレートの威力はダルビッシュの方が『上』です。そのダルビッシュのストレートが打たれたとなれば、藤川の評価もガタ落ちです」(前出・米国メディア陣)
藤川争奪戦が盛り上がってこないのは、ダルビッシュのホロ苦デビューのせいか、それとも、元同僚の低評価によるものか…。藤川の今後の動向に注目したい。