大手の広告代理店幹部が語る。
「プロ野球中継の話を持っていっても、スポンサーは横を向いていますよ。スポンサーになってもヒトケタの視聴率ではメリットがない、と最近でははっきり言われます。もう企業にとってプロ野球の利用価値はほとんどないということなんですね」
テレビ関係者も、その通り、とうなずきながら言う。
「数年前までは肩で風を切って闊歩していたプロ野球担当はまるで元気がありませんね。プロ野球はいまや商売にならない代名詞みたいなものですから。テレビ局もプロ野球で勝負をする時代は終わったという認識ですよ」
かつてドル箱だった巨人戦も視聴率が10%を超えることが少なくなってきた。他の球団は推して知るべきである。パ・リーグが強いからといっても全国レベルでは話にならない。
球界関係者は「全く頭の痛い問題です」と告白する。「スポンサーから魅力がないと言われたら返す言葉がない。事実、スター選手は毎年のように大リーグに行ってしまいますから」。といってスターなんて簡単に作れるわけではない。八方ふさがりの体なのである。
昨年のシーズン中、こんなことがあったという。事情通が語る。
「プロ野球の幹部がNHKにいちゃもんをつけたというんですよ。大リーグ放映ばかりしていないで日本のプロ野球をもっと放映してくれよ、とね。これが本当なら、いかにプロ野球界が困り果てているか、という話ですよ」と。
確かに、NHKは衛星放送で朝から大リーグを放映している。大リーグの試合を見たら、日本のプロ野球はいかにも野暮ったい。ファンが日米の大スターがプレーしているのを見るのは当たり前だろう。NHKに何の罪もない。
今シーズンはさらに福留孝介(カブス)や黒田博樹(ドジャース)らが太平洋を渡った。
「NHKは張り切っていますよ。また新しい顔ができた、と喜んでいます。当然、ファンは衛星放送を見るし、録画して日本のプロ野球が試合をしている夜の時間にビデオを見ることになるでしょう。プロ野球は本当に厳しいと思います。放映ゼロの危機ですよ」と放送ジャーナリスト。
このほどソフトバンクの子会社がパの全試合をネットで無料配信することになった。もう地上波では相手にされないからだろう。中年以上のファンが多いプロ野球だけにどう効果を示すか。
最も焦っているのは巨人である。「優勝しなければファンは見てくれない」(球団幹部)とばかり大金を投じて戦力補強した。黄金時代が忘れられないのだろう。
「昨年の巨人はリーグ優勝した試合のテレビ中継がないという前代未聞の事態を招いた。簡単に言えば赤っ恥をかいたわけ。早く、今年は優勝ゲームはテレビ放映します、と発表したらどうですかね」と評論家。
皮肉ではなく提案である。