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連載ラノベ 夢ごこち(42)

 カーテンの外は大広間になっていた。西洋のお城みたい。たいまつが石の壁にかかげられている。広間の真ん中で、隊長と、吉原君がにらみ合っている。二人とも、剣を構えている。隊長のほうが背が高い。肩幅も広い。吉原君は細身で真っ直ぐに立っている。戦うんだ。

 二人が、剣をぶつけ合った。そのまま、押し合っている。いったん、離れた。

 隊長が剣を下げた。マントが、剣に遅れて揺れた。

 「お前、傷を負っているのか」

 そうだ、吉原君は、脇腹に野蛮な男が投げた短刀が刺さったはずだ。吉原君が急に、苦しそうに脇腹を押さえた。このままじゃ、吉原君が不利だ。

 隊長が、マントをひるがえした。いきなり、自分の剣を自分の脇腹に突き刺した。なんで。

 脇腹に突き刺した剣にたいまつの炎が映っている。隊長が、力を込めて剣を抜いた。傷口から血が流れ落ちている。

 隊長が歯を食いしばった。
 「これで、おあいこだ」

 隊長は、このままじゃ吉原君が不利なんで、自分の脇腹を刺したんだ。正々堂々と戦おうとしているのかも。隊長は私を奪い合うために、自分も傷を負ったんだ。正々堂々と戦って、私を奪うために。そんなに私が欲しいんだ。

 私はどうしたらよいのだろう。男の人たちが、私のために戦っている。負けたほうは命を落とすんだ。

 吉原君のことは好き。でも、隊長もすてき。

 ああ、私はどうしたらよいのだろう。二人の男の人が戦っている。勝った人が私の所に来るんだ。レースのカーテンをそっと開けて、私が寝ているベッドに入ってくるんだ。

 隊長と吉原君が再び剣を交えた。私は、ベッドに入った。

 私は今、服を着ていない。掛け布団で体を隠した。それから、目をつぶった。剣がぶつかり合う音が聞こえる。風があるみたい。何かが私の体に覆い被さってくる。羽音だ。怪鳥が天井から降りてきたんだ。

 いつのまにか、私は、おばあちゃんの部屋に戻っていた。障子が開いている。夜風が入ってくる。屋根の上から鬼瓦が横目で私を見つめていた。

 私は再び目を閉じた。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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