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高橋四丁目の居酒屋万歩計(3)「THE GLOBE CAFE」(カフェ、ざ・ぐろーぶ・かふぇ)

 東急田園都市線、三軒茶屋駅南口Aから徒歩870歩

 シェイクスピアが座付作者をしていたことで名高い、ロンドンのグローブ劇場(地球座)を忠実に再現した、新大久保のグローブ座に通いつめたことがあります。メンバーは戸田奈津子さん(映画字幕翻訳)、渡辺祥子さん(映画評論家)、渡辺さんの夫君、筈見有弘さん(映画評論家)とわたしの4人。
 誰かが観たいと主張する芝居は、あとの3人は拒否できないというルールを定めました。たとえば、わたしの選んだ状況劇場の唐十郎氏(俳優・演出家)の芝居では、客席最前列にしつらえられたプールに、これでもかとばかりぼちゃんぼちゃんと役者が飛び込むものだから、戸田さんが嫌がって逃げ回っておられましたが、ルール上しょうがないということになります。
 新大久保のグローブ座は、識者からその再現具合を高く評価されたものの、なにせシェイクスピア専門劇場が売り物ですから、どうしても硬いイメージが伴って経営は楽ではないようでした。ナショナル(現パナソニック)に買われ、いまはジャニーズ事務所の所有になっています。

 専門性の誇示なのか、予算上の問題なのか、ここではしばしば日本語翻訳字幕が表示されませんでした。ロイヤルシェイクスピアカンパニー(RSC)などの本場物は、“浄瑠璃に英語字幕をつけてもイギリス人の理解をたぶん助けないだろうように、新大久保のグローブ座では日本人もRSCの英語にただ耳を傾けるしかない”(戸田奈津子さん説)のですが、さらに高い向学心で挑戦した異国語の、たとえばスウェーデン語の「ハムレット」やグルジア語の「リチャード三世」などの字幕なし公演には往生しました。ほとんど苦行ですね。
 三宿の交差点を世田谷公園の方角に折れると「ザ・グローブ・カフェ」(地球喫茶店)。ここに足を踏み入れると、わたしの脳裏には石油ショックで電気の供給が止まった73年冬のロンドンが甦(よみがえ)ります。射抜くような目をした古老の古物商が、揺れるろうそくの炎をたよりに鉛色の街で商売をしておりました。まるでシェイクスピア劇のようでした。
 十分な電気照明の下で、英国アンティークの家具に囲まれながら、ブラウンエールを飲んでBLTをつまんでおりますと、国語でのシェイクスピア劇体験は、拒否権のないお三方にとってもけっして楽しいものではなかったのではないか、と反省されます。あれは、彼と我れとのあまりの語学力の差に一計を案じた、わたしの浅知恵でした。すみません。

予算2200円
東京都世田谷区池尻2-7-8 グローブビル

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