暗闇の中を全裸で都庁に向かう女性…。“うん、いいねえ”。心でそうつぶやいた。ヘアヌードカメラマンになりきってシャッターを切り続けていたそのとき、唐突に「すいません」と若いカップルに声をかけられた。
はたから見れば、裸婦像の股ぐらに向けて熱心にファインダーをのぞくスーツ姿の男。完全に変態の部類に入る。なにか咎められるのかなと思ったら、たどたどしい口調で「トーキョー、ガバメント…ナンチャラ、カンチャラ」。無料で見学できる都庁展望台に行きたいらしい。変態写真を含む数十枚を撮影する約20分のあいだに、次から次へと3回も外国人から展望台への道を尋ねられた。
幸い、禁断の撮影には気付かれなかったようだ。「アリガトウ」の笑顔にどこかバツが悪かった。