写真を見てほしい。相手選手を押さえつけている選手の肩などに写っている光の球のようなもの。これがオーブだ。
オーブというのは、よく撮影される心霊現象の一つである。人によっては玉響(たまゆら)とも呼ぶ。一説によると、オーブとは霊が球体に姿を変えたものであるという。しかしながら、現れるすべてのオーブが悪霊なのかというとそうではない。ほとんどの者が無害で、むしろ妖精や先祖霊であるとかいわれている。だが、もちろん中には負のオーラを持った悪霊的オーブも存在する。研究家によると球体の中にうごめくようなものが視認できるオーブは悪霊であるそうだ。とある霊能者曰く、このようなオーブは人に悪い作用をもたらすことがあるらしく、そのような心霊写真が撮影された時は、十分に注意していただきたい。
オーブが現れたのは、障害者たちがプロレスを見せる場、ドッグレッグスの大会だ。障害者プロレスというのは、15年前に「ドッグレッグス」の代表、北島氏をはじめとした東京のボランティア団体が開催したものだ。最初は東京の団体だけであったが、現在では福岡の「FORCE」仙台の「ODAZUNA」といった二つの団体があり、全国に40人ほどの選手が存在する。障害者が行うプロレスといっても、健常者のプロレスと大きく異なる点はない。唯一異なる点というと、相手の不自由な部位を意図的に攻撃してはならない、3カウントはなく、ギブアップやTKO、判定で勝敗が決められる。健常者と障害者が戦う場合、健常者は相手の不自由なところに枷を付ける。以上のルールだけである。もちろん本気で戦う気持ち、プロレスを好きだという気持ちは健常者とまったく同様だ。
このような熱い気持ちを持ったプロレスラーたちが戦うリング場に現れたオーブ。このオーブはなぜ、このリングに現れたのか。一説によると、このオーブは障害者たちの霊ではないかといわれている。障害者たちは皆一様に、不自由な部位を抱えている。非常に重い障害を負ってしまうと、一生体を動かすことのできない者もいるであろう。そのような者たちにとって、障害者プロレスの選手らはスターである。動かない体を動かし、のびのびと生きている彼ら。その姿に己の理想を垣間見る者も少なくはないだろう。彼らに羨望の念を抱いたまま亡くなった者の霊が現れたのではないか、といううわさもある。その証拠といわんばかりに、どのオーブも澄んだ淡い輝きを持っている。まるで霊たちの純粋な思いが反映されているようではないか。
パラリンピックが存在するように、スポーツをしたいと心から望む障害者は非常に多い。障害者プロレスが存在するのも、プロレスをやりたいと望む者がいるからに他ならない。リング場に現れたオーブ同様、障害者プロレスの選手らの勇姿を見守ることも、彼らの人権を尊重することになるのではないだろうか。