それは田中がロサンゼルス入りした1月8日、ビバリーヒルズの豪邸にヤンキースの一行が現れ、入団交渉が行われた席でのことだった。
「3時間ほどの交渉の途中で松井からの電話はあったようです。松井はメジャーリーグ経験者の立場から田中にアドバイスを送ったのでしょうが、日本球界の情勢も含まれていた。というのも、ルール的にも道義的にも、巨人がこの交渉にちょっかいを出すのはおかしな話。そこで、ヤンキースOBでもある松井が、あくまで個人的な分析として、日本(巨人)の情勢を伝えたのでしょう」(ロス在住のスポーツライター)
本誌が入手した情報によれば、電話の内容は次のようなものだったという。
1:巨人はいつでも迎え入れる用意がある。
2:業務提携の関係にあるヤンキースがベスト。
3:長期契約を結んだ上で、4年目終了時にオプトアウト(契約破棄)条項を設ける。
この大筋のラインに沿って田中サイドは要望を出し、ヤンキースが受け入れた。中でも今後、奏功するのは「オプトアウト条項」だ。
7年契約を結んだ上で4年目終了時に、田中の意思で契約破棄を選択できる権利。松井氏は、これに併せてヤンキースの年俸(23億円)をある程度保障することで巨人入りの布石を打ったのだ。
「2月の宮崎キャンプで松井は巨人の臨時コーチを務めますが、来季からの巨人入りはない。これまで通りニューヨークにとどまり、ヤンキースからコーチングや球団のマネジメントを学ぶ。その間、ずっと田中を見守り続ける。そして、帰国して1シーズン原監督の下で助監督を経験し、監督に就任、すぐさま田中を三顧の礼で巨人に迎え、開幕投手に起用する−−。松井の頭の中では、こんな構想が出来上がっているはずです」(事情通)
“生電話”は5年後、花開くか。