原作のタイトルになっているカシコギは魚の名前である。カシコギのメスは産卵後に、どこかへ行ってしまい、子どもの世話はオスが行う。子どもが巣立つとオスは岩の間に頭を突っ込んで死んでしまう習性があると伝えられている。小説『カシコギ』は、この伝承をモチーフに難病の息子への父親の無償の愛を描いた。父親自身は全く救われない展開によって父親の愛の献身性が際立ち、多くの韓国人が涙した。
これに対して『グッドライフ』は家族の絆を強調する終わり方になった。末期ガンに侵された澤本大地(反町隆史)は羽雲(加部亜門)を拒絶し、人知れず死んでいこうとする。「羽雲にしてやれることはもうない。私の役目は終わった」と考えたためである。これは伝承のカシコギの習性に該当する。
しかし、ドラマは与えるだけでなく、受け取ることも愛であると訴える。羽雲から逃げていた大地が、羽雲の思いに応えて振り返るシーンが見どころである。家族を省みない仕事人間であった大地は妻の家出や息子の難病で大きく変わったが、最終回でも新たに変わった。前クールの『美しい隣人』と同様、複数の解釈が可能な結末となったが、家族に見守られた結末には大地にとっても救いがある。
もともと『グッドライフ』は「お涙ちょうだい」路線と位置付けられるが、不幸が続く展開を直視できない視聴者も少なくなかった。それでも大地と羽雲の父子の心温まる交流を軸とすることで、重たい話を敬遠する視聴者も惹きつけた。ヒット作『GTO』で生徒の近い教師役を演じ、実生活でも父親で「反町隆史の子育て論」という雑誌記事が出る反町は、子どもを愛する父親に適役であった。
最終回の大地は末期ガンで車椅子生活になっており、演技に動きはなかった。しかし、『GTO』の鬼塚英吉役などで培った反町の熱い男のイメージは健在で、台詞や動きも乏しい中でも大地の思いを強く伝えていた。若い頃のヤンチャとは違った渋さを発揮した最終回であった。
(林田力)