search
とじる
トップ > スポーツ > 海外も注目してきた日本の独立リーグ

海外も注目してきた日本の独立リーグ

 “独立リーグの役割”が少し変わりつつある。
 元東京ヤクルトスワローズ・高津臣吾投手(42)が国内独立リーグのBCリーグ・アルビレックス新潟入りを表明した。

 BCリーグは「1球団27選手まで、年俸総額3105万円が上限」なるルールがあり、そのなかで高津に割り当てられた年俸は推定200万円。日本プロ野球史上最多の通算286セーブ(日米通算313セーブ)、ホワイトソックスと250万ドル(約2億8000万円/当時)で契約した“ビッグネーム”の転身に驚いたプロ野球関係者も少なくなかった。
 「野球が大好きだから!」
 再スタートの入団会見に臨んだときの表情は、むしろ誇らしげにも見えた。

 そもそも、独立リーグが誕生した背景には『不景気』もあった。
 社会人野球の都市対抗戦を盛り上げてきた大手・有名企業の野球部が相次いで休廃部し、自主運営式のクラブチームに様変わりした。そのクラブチームの成功によって都市対抗など社会人野球の大会は存続されているが、『四国アイランドリーグ』の設立構想が発表された2004年秋、筆者の取材に対応してくださった同リーグ役員とは「学生野球人口」についても話し合った。
 高校野球人口は約15万人、大学野球部員は全国でおよそ2万人強。学生が卒業後も野球を続けられるのは、プロ野球に指名された約80人と、社会人野球に選ばれた約1000人だけ(04年当時)である。1%にも満たない計算になる。まさに『選ばれた精鋭』であり、だからこそ、「プロ野球は凄い」とも言えるのだが、独立リーグの新設は、野球が好きな17万人強の学生に、僅かだが「チャンス」を広げてくれたのである。
 「高校を例に上げれば、野球をやれるのは実質2年半しかありません。もう少し長く続けていればと思える金の卵もいるし、部員数の多い強豪校で目立つことのできなかった『これからの球児』もいます。廃部に追い込まれた社会人選手のなかにも、これからの選手もいますし…」
 同リーグ役員はそんな話も聞かせてくれた。
 プロ野球を目指す『もう1つの社会人野球組織』の様相もあったが、今日は新しい役目を追っている。『外国人選手の供給』である−−。

 昨秋、阪神タイガースはBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサス所属のロバート・ザラテ投手(24)と育成契約を交わした。ベネズエラ出身の左投手で、2010年シーズン途中、群馬にやってきたのだが、ザラテ入団後、スタンドの光景がちょっと違ってきた。
 「150キロくらい出す凄い投手が入った」と好奇心で集まったお客さんもそうだが、プロ野球各球団のスカウトが目立ち始めた。正確には「今まで以上にBCリーグの試合をチェックするようになった」と言うべきだろう。
 スカウトたちはこんな言い方をしていた。
 「群馬の高校野球を見たついでに」
 「明日、新潟なんだけど…」
 高校球児のスカウティングと同時に、ザラテの視察も行っていた。
 150キロ近くを放る左投手は少ない。筆者もザラテを観戦したが、「本当に外国人?」と思うくらい、一塁ベースへのカバーリングや牽制が巧く、その点はスカウト陣も評価していた。「前歴はメジャーのルーキーリーグ、1A」とのことだが、おそらく、日本の細かなサインプレーにも適応できるザラテタイプの原石はたくさんいるのだろう。
 ザラテが3カ月余の独立リーグ在籍でプロ野球に進めたのは、日本のスカウトがわざわざアメリカやベネズエラまで行かなくて済む、高校球児のスカウティングと同時に視察できたからである。また、米ルーキーリーグの選手が日本の独立リーグに関心を寄せ始めたことは、将来、日本プロ野球界の『助っ人事情』も影響を与えるだろう。
 「外国人選手を獲得するのは手続きも大変なんだけど、ザラテのように独立リーグを経由してプロ野球へ、プロ野球で成功を収め、メジャーに挑戦するというパターンも増えてくるでしょうね」
 BCリーグ関係者がそう語っていた。
 当然、日本のプロ野球スカウト陣はこの流れを歓迎している。
 独立リーグがさらに注目されれば、日本のアマチュア野球のレベルの高さを海外に知らしめる契機にもなるはずだ。

 昨秋のドラフト会議では4人の独立リーグ選手が指名された。なかでも、チーム再建で即戦力選手を求めていた横浜ベイスターズは、大原淳也(香川)、つる岡賢二郎(愛媛)の2選手を獲得している。
 学生球児が野球を続けるための受け皿、プロ入りの夢を果たすための登竜門、高津のようにまだ燃え尽きていない元プロ野球選手の移籍先…。経営状態はどこも苦しいとも聞いているが、日本の野球界における独立リーグの存在意義はやはり大きいのである。(スポーツライター・美山和也)

関連記事

関連画像

もっと見る


スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ