「筆頭は黒田(博樹=37)でした。1年1500万ドル(約12億円)の高額・好条件の年俸提示がされたのは、ローテーションの2番、実質、エースとして活躍した時期もある右腕を手放したくないと思ったからです。ヤ軍は黒田の残留如何で今オフの補強戦略が大きく変わっていました」(米国人ライター)
ヤンキースはプレーオフ終了直後に二塁手のロビンソン・カノー、中堅手のカーティス・グランダーソンの慰留に成功。この時点で、去就が決まっていなかったヤンキース選手は、黒田、捕手のラッセル・マーティン、DH候補のラウル・イバニエス、イチローの4人。昨年3月に現役復帰し、引退の可能性もあったアンディ・ペティットの慰留もスンナリと決まったが、イチローの残留交渉は遅々として進んでいない。
「ニューヨークのファンはイチローに残ってほしいと思っています。こちらでは(米国)本人もそのつもりだと伝えられていますが、年内には決まらない可能性が高い」(前出・同/12月8日時点)
イチローの交渉が最後にまわされたのにはワケがあった…。
「チーム(打線)のバランスを考え、ブライアン・キャッシュマンGMは右バッターが欲しいとも打ち明けています。実際、ヤ軍は右翼の守れる右打ちの外野手も探しています」(同)
現時点で、ヤンキースが獲得リストに挙げているのは、ニューヨークメッツからFAになったスコット・ヘアストン外野手(32)だ。
昨季は故障等で控えにまわったが、今季は134試合に出場。出塁率2割9分9厘、本塁打20本と活躍している。祖父、父、兄、伯父など3世代5選手がメジャーリーガーという野球一家のエリートでもあり(引退も含む)、09年WBCではメキシコ代表にも選ばれている。
ヘアストンのメッツでの年俸は110万ドル(約8300万円)。イチローがヤンキースにトレードされたころ、旧在籍チームのマリナーズは交換要員として若手2選手を得たが、「(ヤ軍の交換選手の提示内容には)金銭も含まれていた」という。実際、マリナーズの公式ホームページにも「225万ドル(約1億8000万円)が払い込まれた」ともあった。
マリナーズに金銭補填がされたという情報について、こんな見方もされている。
「イチローの年俸は、年俸1800万ドル(約13億5000万円)。長期契約の途中で移籍したため、今季の年俸全額はマリナーズが支払い、その幾ばくかをヤンキースがマ軍側に補填したと見るべきです。こういう変則的な年俸の支払いがされるのは、メジャーでは珍しいことではありません」(前出・同)
その通りだとすれば、ヤンキースはイチローと新たな契約を結ぶにあたって、適額を決める時間を必要とし、「交渉の順番を最後にした」とも考えられる。
イチローのヤンキースでの67試合における打率は3割2分2厘、出塁率は3割4分。マリナーズでは2割6分台の打率に低迷していたので、ヤンキースで復活したと言っていい。そうなると、ヤンキースはそれなりの年俸を提示しなければならないが…。
先に交渉が行われるマーティン、イバニエスに残留条件(年俸)を釣り上げられた場合、ヤンキースは「110万ドル」とお買い得なヘアストンとの交渉に切り換えてくる?
※メジャー選手のカタカナ表記は『メジャーリーグ名鑑』(廣済堂出版2012年版)を参考にいたしました。米ドルの円計算は当時のレートによるものです。