「WBCインク(米・大会主催者)とNPBが話し合って確認した『WBCのロゴを使わなければ、その大会スポンサー料、興行収益は日本のもの』という従来の収益配分は変わっていません。参加を決意してくれたのは嬉しい限りですが、選手会が態度を一変させた理由が分からない」
しかし、4日の選手会ミーティングが始まる前から「選手会が折れる。参加表明に一変」の情報は各メディアに流れていた。
「某メディアが、選手会が不参加を表明した直後に(7月20日)、一般アンケートを行いました。『収益の不平等配分に抗議する選手会を支持』の回答が一番多かったんです。ファンの後ろ楯を得た以上、選手会は折れないと見る関係者も少なくありませんでした」(プロ野球解決者の1人)
メジャーリーグ報道に携わる米国人ライターに、この一報を伝えたところ、興味深いコメントが返ってきた。
「米国では『日本は参加しない』と“断定形”で伝えられていたんですが…。でも、優勝国の不参加が現実となれば、過去2大会の意義もなくなってしまいます。アジア方面の新たな一次予選会場も、経済発展の著しい中国に移すなんて話も出ていました。日本はアジアでの主導権を失う寸前でした」
また、NPB関係者の1人は「下田(邦夫)事務局長の最終説明で誠意が伝わった」と話していたが、選手会を動かしたのはそれだけではないようだ。
「ロンドン五輪ですよ…」(関係者)
メダリストによる銀座パレードが大変な盛り上がりを見せたのは説明するまでもないだろう。ロンドン五輪による日本国内の大きな経済効果は見られなかったが、経済界は「スポーツの国際大会における反響の大きさ」を再認識したという。「プロ野球が国際大会を自ら放棄すれば、他競技に出資することも」と、現在の野球興行に関わる企業から撤退を示唆する声も囁かれていた。興行収益が減ることになれば、選手の年俸にも影響しかねない。選手会は“大人の判断”もしたようだ。
「なでしこジャパンは昨年のワールドカップ決勝戦後、東日本大震災の支援にお礼を述べる横断幕を掲げ、大きな反響を呼びました。WBCの侍ジャパンは引き続き、支援をお願いする立場にもなるし、国際大会を放棄すれば、プロ野球界の復興に対する誠意も疑われてしまう」(前出・同)
なでしこのメンバーがWBC問題も解決させたということか−−。
WBC参加問題は、各方面に影響を与えた。大会スポンサー、メーカーなどの対応に追われたNPBはもちろんだが、「新井貴浩の不振はその精神的負担では?」という、笑うに笑えない話も聞かれた。
「選手のなかには、不参加表明後、地元後援会や懇意にしている知人等から叱られた者もいたそうです。彼らも精神的に参っているのは間違いありません」(前出・プロ野球解説者)
NPB役員は疲労困憊、選手会は精神的にボロボロ…。震災復興のためにも『侍ジャパン』には健闘してもらいたいが−−。