選手会は7月20日、大阪市内で臨時大会を開き、3連覇が懸かった来年3月に開催予定の第3回WBCに参加しないことを全会一致で決めた。新井会長は「ファンも楽しみにしていたし、選手も楽しみにしていた。ただ、5年後、10年後、これからの世代を考えた時に、苦渋の決断をせざるを得なかった。1年前から(主催者に)要望を出しているのに、1年経っても何にも返ってこない。今の段階で(主催者から)アクション、アプローチがあるとは考えられない」と語った。
そもそも、この問題の始まりは1年前にさかのぼる。昨年7月22日、選手会は参加条件が改善されない場合はWBCに参加しないことを表明した。選手会側が問題視したのは利益配分。第1回、第2回ともに約1800万ドル(当時のレートで16〜20億円)の利益があったが、配分率はMLB(米国)が66%、日本が13%と極めて不均衡なものだった。この不公平感を解消することが、選手会側の条件だったのだ。
NPBと主催者側の交渉は昨年8月から始まった。WBCのスポンサー収入の約7割は、日本を支援する企業から出ているとされる。NPBはそのスポンサー収入は、日本が得られる権利と主張した。しかし、MLB側から大きな譲歩は得られず。やむなく、12球団は方針を転換し、WBC期間以外にも日本代表(侍ジャパン)を運営しスポンサーを募って、WBCとは別の独自の利益を確保することを決めた。
これを盾に、12球団は昨年12月1日、選手会の了解なしにWBCへの参加を表明。さる7月19日には、参加前提で日本が1次ラウンドでキューバ、中国と同組になることが明らかになった。
そこで待ったをかけたのが選手会。問題を投げかけた1年前から何ら改善されていないとして、不参加表明に至った。選手会は侍ジャパンに協力することには同意しているが、これは論理のすり替えで、WBCの利益配分の問題は全く解消されていない。
NPBと選手会は8月1日に再協議する意向だが、もはや主催者側の条件が変わることはまずない。選手は各球団との契約上、国際大会への出場は明記されておらず、NPBが参加を強要することはできない。残された道は、選手会がNPBの説得に折れるかどうかだが、WBC出場ボイコットが現実味を帯びてきた。
(落合一郎)