「経営陣は8月中に話し合いの場を設け、選手会側を説得する予定です。選手会が妥協するという見方と同じくらい、彼らの態度は変わらないとの声も聞かれます」(在京球団職員)
選手会がWBC不参加を決議した理由は、カネだ。WBCの収益は大会を運営するWBCIによって一括管理されている。その配分は米国66%に対し、日本は13%。前出の球団職員によれば、連覇を果たした前大会の取り分は、日本円に換算して約2億円。この不公平感は経営陣側も首を傾げていたが、大リーグ機構側と実際に話し合い、「絶対に妥協しない」という米国側の強気な態度も改めて思い知らされた…。
「昨秋、オーナー会議で議長を務めた楽天の島田亨オーナー(当時)が『侍ジャパンの常設』という折衷案をまとめてきたんです。WBC参加目的以外で結成された代表チームの興行に関しては、その収益は自国の取り分にしていい、と。そのころは、この案で選手会を説得できると思われたんですが」(同)
不公平感が改正されない以上、今般的な解決になっていないとする選手会側の言い分は間違っていない。
「島田氏の渡米する前、球界に強い影響力を持つ渡辺恒雄・巨人会長が『最初から妥協してはダメだ。出場しないなら、出場しないで…』と発言していました」(球界関係者)
経営陣に「選手会の態度は変わらない」という悲観的な声があるのはそのせいだろうか。
しかし、経営陣は島田氏が折衷案をまとめた後、正式回答の期限が迫っていたため、「参加する」と米国側に伝えている。選手会の意志を確認する前の“フライング発言”だったが、ここにきて、「やっぱり出ません」と米国側に伝えた場合、日本プロ野球界は信用を失うという。
オリックス・岡田彰布監督が興味深い発言をしていた。
「大谷(翔平=花巻東)と藤浪(晋太郎=大阪桐蔭)のプロ入りを1年遅らせて、WBCに出せばええんちゃう?」
記者団とのフリートークで出た冗談だが、WBCを主催する米国側は「日本は参加するものと認識している」と、選手会のボイコット表明後も発言している(7月23日時点/現地時間)。一部の球界要人は、選手会には加盟していない日本人メジャーリーガー、社会人・大学生による混成チームでの参加を真剣に検討していた。
「オリンピック競技から野球が消え、アマチュア球界は国際的な大きな大会に飢えています。シドニー五輪でこちら(プロ側)が選手派遣に協力した実績もあるので、正式に協力を要請すれば建設的な話し合いもできるはず」(前出・関係者)
また、経営陣が第3回WBCに「参加する」と回答した昨年12月時点で、NPB以外からの選手招集も検討されていたという。日系3世のメジャー捕手、カート・スズキ(28=アスレチックス)である。阪神・城島の故障、さらに前大会で「左打者に偏重した野手招集になってしまったこと」「打者がストレートに力負けする場面があった」などの反省点から、カート・スズキの名前が浮上してきたという。
WBCは出身国に関しては“厳しい線引き”をしていない。国籍が違っても、“先祖がその国の出身なら”と、寛容なルールになっている。アスレチックスでクリーンアップを打つこともあるスズキを本当に招集できるのなら、たとえ日本人投手とバッテリーが組めなくても、日本代表チームの打線の中核を託せる…。
捕手・スズキ、二遊間は川崎宗則と西岡剛、外野陣はイチロー、松井、福留、青木。ダルビッシュと黒田の出場をWBCIにもサポートしてもらい、3番目の先発は岩隈、リリーバーは高橋、上原、岩隈、建山、田沢…。ここに社会人と大学生のドラフト候補を加えれば、なんとか戦えるのではないだろうか。選手会と折り合いが付くのがベストだが、「日本人メジャーリーガー&アマチュア」の混成・サムライジャパンも面白そうである。