3つのメダル(金×2、銅1)をぶら下げて凱旋帰国した北島を待ち受けたのは「引退表明まだか?」の質問責めだった。
記者会見のため、空港からその足でバスに乗り込み、重たい荷物を持ったまま東京都北区のナショナルトレーニングセンター入り。午後10時半からの会見には、本紙を含む大勢の報道陣が押し寄せた。それだけ北島の今後の動向に注目が集まっている。
椅子にポツンと座らされた北島は、カメラや記者にびっしり取り囲まれてごらんの表情。これはいったいなにごとか、とハトが豆鉄砲を食らったような顔をみせた。
聞きたいことは山ほどあるが、もっぱらの最大関心事は引退するかどうかに尽きる。意地悪な感じがするかもしれないが、国民がそれを知りたがるかぎり報道の宿命だ。
そんなことは北島も百も承知。それゆえ注目される今後の去就について「まだ何も決めていない。まだ答えは出さないでおこうかなと思っている」とイヤがるふうもなく話した。
しかし、はいそうですか、とならないのもまた事実。同じ質問を繰り返すわけにはいかないから、こういうときは“変化球”を投げる。いま、いちばん何をしたいですか?北島が答えた。
「なにも考えたくないですね」。練習するでも遊ぶでもなかったのは、時間がほしいというサインだろう。だから「五輪が終われば燃え尽きる。ここから、さあ4年後という気持ちにはなれない」と素直な気持ちを述べた。
「ホッとした。4年間という月日は長く感じたこともあったが、この金メダルですべて報われた」と北島。会見後には、金メダルで頭をかくなどちゃめっけをみせる一幕もあった。大仕事をやってのけた25歳に、もう少しゆっくりと考える時間をあげたいところだ。