福田首相にとっては価値ある支持率下げ止まりとなった。共同通信の最新電話世論調査(12〜13日)によると、福田内閣の支持率は25.0%で、発足以来最低だった前回5月の調査から5.2ポイントも上昇。参院で首相問責決議可決を受けた緊急調査だっただけに、永田町では「まさか!の風が吹き荒れた」(関係者)と驚きの声が上がっているという。
日本経済新聞が5月下旬に行った世論調査でも前回と比べプラス3ポイントの24%で、下落にブレーキがかかったことがうかがえる。一時は洞爺湖サミットを花道に勇退か?とまでいわれたのだから、息を吹き返した感はある。
一方、期待に反して数字が伸びないのがキムタク主演のドラマ「CHANGE」(毎週月曜午後9時〜)だ。視聴率男のキムタクが史上最年少の総理大臣役に挑むことでオンエア前から話題になったが、ふたを開けてみればライバル視する日本テレビ系ドラマ「ごくせん」(仲間由紀恵主演、土曜午後9時〜)に完敗。ビデオリサーチ調べによると、最新の16日放送分は関東地区世帯視聴率が19.1%。3週連続で20%割れと低迷している。
永田町関係者が冗談めかして言う。
「人気、知名度、話題性とも抜群の“朝倉首相(キムタクの役名)”が視聴率20%を割り、マスコミに悪口ばかり書かれている福田首相が支持率20%台を回復した。ノリの悪い福田首相がこのところ妙に元気なのは、取り巻きが『キムタクに勝っちゃいましたね』などと持ち上げたせいだというウワサがある」
確かに、ここ2〜3週間の福田首相は元気いっぱいだ。たとえば最新のメルマガ(12日号)のタイトルは「あきらめないこと。福田康夫です」。短いフレーズの中に自信がみなぎっている。
国際宇宙ステーションの宇宙飛行士・星出彰彦さんとの交信を振り返りながら、地球温暖化問題に取り組む決意を表明。星出さんが、夢を実現するために大切なことを「あきらめないこと」と子どもたちに答えたエピソードを紹介し、共感するように「厳しい道のりは今始まったばかりですが、一歩ずつ着実に歩みを進めたい」と力強く言い切っている。
「ドラマは小泉前首相の首相秘書官だった飯島勲氏が監修しており、“キムタク首相”の言動はどことなく小泉首相と似ている。志を貫くためには古参議員との衝突もいとわず、ぶっきらぼうであっても自分の言葉で話す。郵政民営化を貫き、政治をワイドショー化した小泉前首相そのもの。国民ウケを狙ったパフォーマンスを心底嫌う福田首相にしてみれば、ドラマがコケてさぞ痛快だろう」(政治記者)
しかし喜んでばかりもいられない。共同通信の調査では、福田首相を支持する理由で最も高かったのが「ほかに適当な人がいない」の47.1%。キムタク首相のドラマを毎週楽しみにしている視聴者には、そんなネガティブな理由で見る人がどれだけいるか?
芸能関係者は「同じ20%ラインの攻防であっても、視聴率と内閣支持率では数字の持つ意味が異なる。プライムタイム(午後7〜10時台)のドラマで20%はまずまずだけど、内閣支持率のそれは完全アウトでしょ?」と指摘した。
○政治ドラマのジンクス
芸能関係者によると、政治ドラマはコケるというジンクスがある。
2001年秋の日テレ系「レッツ・ゴー!永田町」は、週刊誌の連載漫画を原作に、実在する議員の名前をもじるなど政治の裏側をコミカルに描いた作品。主役の政治家秘書にとんねるずの石橋貴明、和泉俊一郎首相役に岩城滉一ら豪華なキャスティングで臨みながら視聴率はおおむね1ケタ台。
1997年春の三谷幸喜脚本によるフジ系「総理と呼ばないで」は唯一の例外で、初回20%超えをマーク。史上最悪の首相を田村正和が演じて完成度も高かった。それでもクール中盤は数字がとれず、平均視聴率は14.4%に落ち着いた。
「CHANGE」は「ごくせん」との対決では分が悪いものの、5月12日の初回20%超えからスタート。6月2日から最近3回は19.3、19.5、19.1%と落ち込んでいる。芸能関係者は「フジが強力に番宣(番組宣伝)をかけた“月9枠”なのに、視聴率で同局ドラマ『ラスト・フレンズ』にも抜かれてしまった。新聞の号外を真似て作ったチラシをまいたり、車をプレゼントするキャンペーンをやったり、相当金はかけている」と話す。次回23日の第7話は放送時間を15分拡大する予定。三谷ドラマのようにV字回復なるか?