腎臓は背中の真ん中あたりに左右2つあるそらまめ型の臓器だ。身体の老廃物や余分な水分を尿として作り出す機能を持つ腎臓だが、腎臓の中で尿をためる部分を腎盂という。腎盂に細菌が繁殖し、腎臓に炎症が及んだものを腎盂腎炎と呼ぶ。
腎臓で作られた尿は尿管、膀胱、尿道へと運ばれ、尿として排泄される。尿が通る尿路に細菌が混じらないのが通常だが、尿道から入り込んだ細菌が尿路をさかのぼり感染することを尿路感染症、腎臓までたどり着き感染を起こすと腎盂腎炎となる。
腎盂腎炎は尿道が短い女性の方がなりやすく、健康成人においては性交渉がきっかけになることも多い。一方、男女とも尿路の奇形、糖尿病やステロイド使用などがある場合や、男性の場合は前立腺疾患も腎盂腎炎のリスクとなる。
腎盂腎炎の典型的な症状としては高熱や全身のだるさ、背中の痛み、背中をたたくと痛がひびくといった症状が挙げられる。また、腎盂腎炎の症状が起きる前に排尿時の痛みや頻尿、残尿感などを伴う膀胱炎が先行することも多い。
腎臓では血液から尿を作り出していることから血管と密接している。腎臓にまで細菌が到達した腎盂腎炎では容易に血液に細菌が波及してしまうこともありウロセプシス(尿路の感染を原因とした敗血症)の原因になりやすい。敗血症の死亡率は25%ともいわれ、敗血症の原因の25%は尿路感染症といわれる。
膀胱炎の場合には内服の抗生剤で治療が可能だが、感染が腎臓に至る場合には入院の上、点滴での抗生剤治療が必要となる。敗血症ではさらに長期間の点滴治療が必要になるため尿路感染症では早めの治療が肝要ということだ。尿路感染症を予防するためには尿路に細菌が侵入しないよう水分摂取を心がけ、トイレを我慢しないことくらいか。
頻回に膀胱炎や腎盂腎炎を繰り返したり、男性で尿路感染症を引き起こす場合には尿路奇形や感染になりやすい病態が隠れている可能性もある。
寒い時期には自然と水分の量が減りがちだ。普段から意識して、水分補給することが大切だ。尿路に気になる症状がある場合には恥ずかしがらずに病院を受診してほしい。
参考:敗血症.com 日本集中治療医学会 http://xn--ucvv97al2n.com/q_3.html
感染症治療ガイドライン 尿路感染症・男性性器感染症 http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_nyouro.pdf
文責: 医師 木村ゆさみ