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相次いだ30代芸能人の訃報…突然の呼吸苦、心不全の原因とは

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滝口幸広

 俳優の滝口幸広さんが2019年11月13日に34歳の若さで突発性虚血性心不全で死去、ほどなくして、2月4日にドラマーの山内“masshoi ”優さんが37歳で急性心不全で亡くなったと報道された。2人とも30代の若さで、一般的には病気とは無縁と思われる世代だ。

 心不全とは、「心」臓のポンプ機能が充分に働かず「不全」状態になることをいい、症状としては呼吸困難やむくみなどだ。心不全に至るには、心臓の機能が衰える原因となる心臓病の存在を考える。心不全に至る直前に、心臓病が発症しているかもしれないし、知らず知らずのうちに心臓病が発症してじわじわと心不全が進行することもある。

 心臓病がありながら、薬を飲み日常生活を過ごすのは慢性心不全というが、急性の場合には突然の呼吸困難に落ち入り、時として死に至ることもある。命が助かれば、慢性心不全だ。

 滝口さんの場合は突発性虚血性心不全と報道されていた。心筋虚血とは心臓を覆う冠動脈が狭くなると血流が妨げられ、心筋が酸欠の状態になることをいう。狭心症や心筋梗塞などの心筋虚血は心不全のきっかけとして一番多い。狭心症は一時的な心筋の酸欠状態で済むが、心筋梗塞では血流が完全に途絶し心筋が壊れてしまう。

 急性心筋梗塞により突然、心機能が失われて急性心不全に至ることはよくある。心筋梗塞などが増えてくる50代前後から虚血性心不全も増えていく。急性心不全を乗り越えると、慢性心不全と付き合って行くことになる。

 山内さんの場合は、虚血性とは報道されていなかったが、持病の既往の報道もなく、何が心不全のきっかけになってしまったのか不明だ。30代の若年で急性心不全に至る場合、まず念頭に浮かぶのは、心臓の筋肉が侵される心筋症の存在。それから、ウイルス感染など風邪症状が先行し感染が心臓まで及んでしまう心筋炎などだ。

 急性心不全で心筋症の存在に気づく場合は、心不全の状態を乗り越えても、いずれかの段階で人工心臓や心臓移植などに至るケースも少なくない。また、劇症型とよばれる重症の心筋炎にかかってしまうと、現在の医療でも致死率は40%以上と非常に高い。

 横になると苦しい、寝る時も座ったままというのが急性心不全の特徴的な症状だ。しかし、そこに至る前に健診などで、心電図やレントゲンの異常、胸の痛みや動悸など心臓病のサインが出ているかも知れない。

 親族に心臓病を患っている人がいる場合や、突然死した方があればより注意が必要だが、年代や家系関係なく心筋症を発症することも多い。

 急性心不全も治療が早いほど救命率は高く、その後の慢性心不全の経過にも影響してくる。健診の異常で来院し、たまたま心筋症を発見することもよくある。急性心不全に至ったら救急車を呼ぶしかないが、そうなる前に気になる症状や検査異常があれば、詳しくみておくことをお勧めする。

参考: 急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン 日本循環器学会
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_izumi_h.pdf

文責:医師 木村ゆさみ

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