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凶悪化する老人たち

 マスコミはよく「年々凶悪化する少年犯罪」と報道します。しかし、現実にはここ40年間の間に、少年凶悪犯罪も一般凶悪犯罪も激減しており、なんと平成22年の殺人事件の認知件数は、2年連続で戦後最少という結果でした。昔に比べれば犯罪の少ない国に、日本はなっているようです。

 ただ…。
 少年凶悪犯罪や一般凶悪犯罪が激減しているのはいいのですが…、高齢者、つまり老人による殺人などの凶悪犯罪が年々増えてしまっているんですよ。
 現実では「キレる若者が増えている…」のではなく「キレる老人が増えている」のです。
 こう書くと、必ず「それは若者の数が減っているだけなのでは…?」という意見が出てくるのですが、年代別での殺人発生率で計算しても、20〜40代の検挙者は減っているのに、60代は増えているのです。

 警察庁が65歳以上の殺人検挙者に、なぜ殺してしまったのかという【原因】を調べたところ、

・1位【憤怒】
・2位【介護・看病疲れ】
・3位【怨恨】
・4位【生活困窮】
  と、なったそうなんです。2位の【介護・看病疲れ】というのは、おそらく自分の親や、自分の配偶者に対する疲れだと推測され、また4位の【生活困窮】はお年寄りになっての困窮となると、なんだか可哀想な気もするんですが、1位【憤怒】、3位【恨み】というのは、ちょっと怖いですね。

 思えば、いまの65〜70歳の人たちが10代後半や20代そこそこだった頃は、日本の犯罪史上もっとも少年による殺人事件が多かった時代だったり、(団塊の世代といわれた)中学を卒業したばかりの若者が「金の卵」などといわれて集団就職で都会に出てきたり、あるいは学生運動が盛んだったりして、ある意味エネルギーに溢れていた世代でした。
 このエネルギーは、「エコノミック・アニマル」と外国に揶揄されるような働きぶりをみせ、日本を世界2位の経済大国に導く一方、ひとつ間違えば殺人や強姦といった凶悪犯罪に向かうことも多かったようです。

 現代、この老人たちのエネルギーは、殺人とまではいかなくても、電車内での暴力行為にも表れています。
 平成22年上半期に日本民営鉄道協会が発表した、全国の大手私鉄16社の駅や車内で起きた、駅員や乗務員を殴るなどの暴力行為の加害者年代のデータを書き出してみましょう。
 
 ・10代 3%
 ・20代 14%
 ・30代 18%
 ・40代 22%
 ・50代 10%
 ・60代 23%
 ・不明 10%
 と、実はこのように60代が一番多いわけです。

 電車内や駅の暴力事件だけではありません。万引き犯についても、高齢者が問題となっているのです。
 警察庁の調べによると、ここ5年ほどの間に少年や若年層の万引き犯は減少しているそうなのですが、65歳以上の万引き犯が、ここ20年間増加の一途をたどり、調査を開始した1986年以降もっとも多くなってしまっているというのです。
 万引きというと軽く聞こえるかも知れませんが、万引きは窃盗犯罪なのです。
 殺人や暴力、窃盗という犯罪行為をやってしまう高齢者が増加しているのは、なんとも残念なことですが、当然、刑務所の中もいまや老人たちが増加しています。
 平成20年度の『犯罪白書』では、「高齢犯罪者の実態と処遇」という特集をまとめていますが、そこには高齢犯罪者の増加が著しいことと同時に、一般刑法犯検挙人員では,高齢の女子の検挙人員は男子の半数近くいることなどが書かれており、
 「今後、高齢犯罪者の増加を抑えていかなければ、『団塊の世代』が高齢に達するとともに、現在よりもはるかに多数の高齢新受刑者が生まれるおそれがある」
 とも書かれております。

 そして団塊の世代が高齢に達したいま、「凶悪化する若者たち」ではなく「凶悪化する老人たち」という新たな社会問題が生まれてきているようです。
 凶悪化し、荒れる老人たちに対し、大人しい若者世代が、取り締まったり、保護したり、指導しなければならないという、ややこしい時代がきているのかもしれませんね。

(巨椋修(おぐらおさむ (山口敏太郎事務所))

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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