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北朝鮮こんどは「クラプトン公演」情報を追う

 米国音楽交響楽団ニューヨーク・フィルハーモニックの“歴史的公演”が終わったばかりの北朝鮮で、早くも次の音楽外交として英国の世界的ロックギタリストであるエリック・クラプトンの平壌公演の情報が世界中を駆け巡っている。しかも、クラプトン公演は金正日総書記の後継者決定を暗示しているという。
 英紙フィナンシャル・タイムズによると、公演の依頼は、北朝鮮国立音楽交響楽団が今年の9月にロンドンで公演することへのお返しとみられ、北朝鮮側は「原則的に合意した」としている。クラプトンは来年初旬に日本公演を予定しており、平壌公演もその時期になるとみられる。関係者のあいだでは「北朝鮮初のロックコンサート実現か」と注目を集めている。
 クラプトン招待の背景には金正日総書記の二男・正哲(ジョンチョル=27)氏の意向が指摘されている。正哲氏は“超”が付くほどのクラプトンファンといわれる。2006年には、ドイツでクラプトンのコンサートを4日間連続で鑑賞したところを日本のテレビ局に押さえられている。

 この動きを受け、北朝鮮の後継者問題の議論が再燃している。北朝鮮事情に詳しい評論家の河信基氏は、先代の金日成主席から金総書記への世襲の流れと同じ動きが正哲氏のケースにも存在するとして、こう指摘する。
 「正哲氏は現在、朝鮮労働党組織指導部の責任副部長の役職にあるとされている。同役職にはかつて金総書記も就任していた。北朝鮮では正哲氏の母(故高英姫)の聖母化が進んでいる。06年には母の自叙伝が発売されるなど、着々と後継者としての正統化を図っている」
 金総書記の母・金正淑氏も、金総書記の後継の前には聖母化が図られたことがある。後継をめぐるその他の動きとして、河氏は「04年頃から北朝鮮の労働新聞に『偉大な党』という新しい符牒が登場しはじめた。これは正哲氏を指したものと考えられる」。
 実際、1970年初めに「党中央」という聞き慣れない言い回しが同じく労働新聞で見かけられるようになり、当時の北朝鮮専門家が首を傾げたことがあった。後に「党中央」は金総書記を指した言葉であることが判明している。
 ここまでの材料が揃えば、後継者は正哲氏で決まったようなものだ。気になるのはその人柄である。
 正哲氏はスイスのインターナショナルスクールで学生生活を送ったことがあるが、「当時の同級生の証言や正哲氏の作文からは、礼儀正しくて、優しい繊細な性格の持ち主であることがうかがえる。しかし、クラプトンのコンサートで他の観客よりも早くスタンディングオーベーションをしていた映像を観ると、内に秘めた情熱家タイプの人物像が浮かび上がる」(河氏)。
 北朝鮮にとって、後継者問題はデリケートなもの。正式な後継者指名のタイミングはいつか。
 「一般的には4年後に予定されている党大会になるだろう。ただ、北朝鮮国内ではクラプトン公演前後に発表される可能性もある」(同)。
 意外に早いお披露目もあり得る。

○エリック・クラプトン
 イギリス出身の世界的ミュージシャン。62歳。1963年の活動開始後、「ティアーズ・イン・ヘブン」などのヒット曲を次々に発表。その地位を確たるものにする。
 華やかな活動とは裏腹に、私生活では自身の薬物依存症、子どもの転落死を経験するなど暗い過去を持つ。熱烈な格闘技ファンでも知られ、2000年5月には総合格闘技「PRIDE」観戦のために来日した。武道館公演の多い日本ツウ。

○北朝鮮の後継者問題
 金正日総書記には正哲氏のほかに、長男・正男氏(36)と三男・正雲氏の3人の息子がいる。正哲・正雲両氏の母親は同じだが、正男氏の母親は異なる。
 2001年5月、日本国内で正男氏とみられる男性が偽造パスポートで入国を図ろうとしたところを入国管理局に拘束される“事件”があった。「ディズニーランドに行きたかった」と語ったとされている。
 正男氏はこの一件などで後継者候補から外されたとの指摘がある一方、「現在も有力な後継者候補」とする識者も存在する。

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