相模原店や府中店がオープンしたのは、それぞれバブル期だ。相模原店は'92年の宮沢りえ主演ドラマ『東京エレベーターガール』(TBS系)の舞台として一躍有名になるなど、郊外ライフの象徴として存在感を放ってきた。
しかし、周辺住民は「平日はお客さんがまばらだし、客層もほとんど高齢者。閉鎖は時間の問題と思っていました」「府中店は狭くて品ぞろえがよくない。電車で20分の新宿店に行っちゃいますね」と、以前から撤退を予感していたという。
一方、地域の自治体にとって閉鎖は痛手のようだ。
「やはり伊勢丹が駅前や街にあるのとないのとでは、都市のブランド力が大きく違います」(自治体職員)
百貨店ビジネスそのものが時代遅れとの指摘もあるが、実は違う。伊勢丹の新宿店や三越の銀座店に関しては、外国人観光客のインバウンド効果などから集客、売り上げ、利益ともに今年は好決算をたたき出しているのだ。
「郊外タイプの百貨店として成功したのが、世田谷区にある『玉川髙島屋S・C』。二子玉川駅のブランドを高め、百貨店とともに町全体が発展していったいい事例です。伊勢丹の2店もそこを狙っていったが、相模原は住民層とのギャップ、府中は小さすぎる店舗がネックになった。ずさんなマーケティングをして、バブルの勢いだけで出店した時点で、負けが決まっていたんです」(経済評論家)
つまり、今回の閉店ラッシュは、バブルの“負の遺産”の清算にすぎず、百貨店というビジネスモデルの終焉を意味するものではないという。しかし、成長を続けるネット通販などには、こうしたスリム化だけでは太刀打ちできない。やはり、何らかの策が必要だろう。