「飛ばないボールの採用で、来年の巨人が東京ドームでどれだけホームランを打てるかが、最大の見物だね」。球界関係者、球界OBの多くが早くもこう明言、興味津々だ。それも当然だろう。
狭い東京ドームは変わらなくても、飛ぶボールという最大の武器を封じられては、巨人の空中戦野球は成り立たなくなる。東京ドームでの本塁打が激減すれば、巨人にとって致命傷になる。今季の投壊現象が簡単に解消されるとは思えないからだ。
逆に相手5球団にとっては、最高の追い風になる。「東京ドームでは野球にならないよ。こすったような打球がスタンド入りしてしまうのだから、たまらない」というのが、相手球団の本音だからだ。リーグ3連覇した昨年までの、年間63試合行われた東京ドームでの本塁打のデータを見ても一目瞭然だ。
07年がチーム本塁打191本。その内、東京ドームで100本を量産している。08年は177本塁打の内103本。昨年も182本の内96本だ。東京ドームでは1試合に1.5から1.6本の本塁打を打っていることになる。
試合数の多い本拠地でホームランが多いのは当たり前だ。が、いかにケタ外れの数字か、今季三ドモエ戦の優勝争いをしているライバルの阪神、中日と比べてみれば、納得できるだろう。
阪神の甲子園でのホームラン数はこうなる。07年、シーズン本塁打111本の内甲子園で40本。08年が83本塁打の内19本。昨年は106本の内42本。
中日のナゴヤドームでの本塁打はどうかといえば、阪神とそう大きくは変わらない。07年、シーズン通算121本の内42本。08年が140本塁打の内61本。昨年も136本の内45本。
こう見てくると、巨人の東京ドームでの異常に多い本塁打数が浮き彫りにされてくるだろう。巨人の甲子園、ナゴヤドームの本塁打数を見ても、いかに地の利、東京ドームに救われているのか、歴然としている。12試合行われる甲子園では07年9本、08年5本、昨年8本。同じく12試合のナゴヤドームでも07年8本、08年8本、昨年10本。広い甲子園、ナゴヤドームでは、本塁打を売りにする巨人打線でもそうは簡単にいかないのがわかる。
今季も巨人の本塁数182本の内、実に103本もが東京ドームで量産されている(8月23日現在)。53試合で103本塁打から、1試合に約2本になる。このお家芸である“ドームラン”が封じ込められては、来季、巨人の優勝はおぼつかないだろう。
それだけに、まだ空中戦で勝負できる今季、優勝を逃したら、お家の一大事になってくる。「原監督は大監督になってきている。V9超えのV10だ」と、巨人・渡辺恒雄球団会長はぶち上げているが、V9超えどころの話ではない。今季、リーグ4連覇ができなけば、また何年間も優勝から遠ざかる暗黒時代の到来になりかねない。