伯父さんもいた。伯父さんは、ずっと野球をやっていたスポーツマン。
夏におばあちゃんの家に泊まりにくると、伯父さんはいつも甲子園を見ている。伯父さんは大阪の人で、四国のチームと大阪のチームが対戦したとき、「どっちを応援するの」と聞いた。「それは大阪だよ」と笑っていた。
伯父さんが、片手を上げた。やはり、伯父さんは、背が高くて背広がよく似合う。
「美雪ちゃん、悪いね」
「いえ」
伯父さんはおだやかな人で、怒った顔を見たことがない。しぜんと、こちらも笑顔になる。
伯父さんが、座布団を引き寄せた。
「どうぞ、座って」
「はい」
腰を下ろしたら、おばあちゃんがお茶を出してくれた。
伯父さんの横に、健太君が座った。伯父さんと並ぶと、健太君はほんとうに小さい。けど、あぐらをかいて、両手をあぐらの真ん中で組む姿がそっくりだ。
健太君が、伯父さんに体を寄せるようにしながら、私を見ている。
「健ちゃん、今日は、よろしくね」
健太君に声をかけた。
健太君は、伯父さんへ顔を向けた。伯父さんを見上げながら、ほっぺたを、まん丸おむすびにしている。
健太君は、ほんとうにかわいい。また、あのほっぺたを触ってみたい。
伯父さんが健太君の頭をなでた。
「そうだ。健太、あとで、美雪ちゃんを、デパートへ連れていってあげるといい」
駅前のことだ。行ってみたい。
「行きたいです」
伯父さんは、私の顔を見て、ていねいに聞いてくれた。
「よかった。美雪ちゃんは、デパート、行ったことあったっけ」
まだ、ない。
でも、新しくできたことは聞いている。
「いえ」
「それは、ちょうどよかった。健太、美雪お姉ちゃんを、ちゃんと案内するんだぞ」
伯父さんは、いつも、健太君へ、友だちみたいに話しかける。
健太君は、「うん」と言いながら、うつむいた。照れているのかな。健太君のつむじがきれいに渦を巻いている。
お茶を飲んでいると迎えの車が来た。
玄関から健太君と二人で、葬儀に出かけるおばあちゃんと、伯母さんと、伯父さんを見送った。
(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)