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連載ラノベ 夢ごこち(15)

 お風呂場を見てから居間に戻った。おばあちゃんがお茶を入れていた。おばあちゃんの背中は、やはり小さくなっていて、着物が重そうだ。

 伯父さんもいた。伯父さんは、ずっと野球をやっていたスポーツマン。

 夏におばあちゃんの家に泊まりにくると、伯父さんはいつも甲子園を見ている。伯父さんは大阪の人で、四国のチームと大阪のチームが対戦したとき、「どっちを応援するの」と聞いた。「それは大阪だよ」と笑っていた。

 伯父さんが、片手を上げた。やはり、伯父さんは、背が高くて背広がよく似合う。
 「美雪ちゃん、悪いね」

 「いえ」
 伯父さんはおだやかな人で、怒った顔を見たことがない。しぜんと、こちらも笑顔になる。

 伯父さんが、座布団を引き寄せた。
 「どうぞ、座って」

 「はい」
 腰を下ろしたら、おばあちゃんがお茶を出してくれた。

 伯父さんの横に、健太君が座った。伯父さんと並ぶと、健太君はほんとうに小さい。けど、あぐらをかいて、両手をあぐらの真ん中で組む姿がそっくりだ。

 健太君が、伯父さんに体を寄せるようにしながら、私を見ている。

 「健ちゃん、今日は、よろしくね」
 健太君に声をかけた。

 健太君は、伯父さんへ顔を向けた。伯父さんを見上げながら、ほっぺたを、まん丸おむすびにしている。
 健太君は、ほんとうにかわいい。また、あのほっぺたを触ってみたい。

 伯父さんが健太君の頭をなでた。
 「そうだ。健太、あとで、美雪ちゃんを、デパートへ連れていってあげるといい」

 駅前のことだ。行ってみたい。
 「行きたいです」

 伯父さんは、私の顔を見て、ていねいに聞いてくれた。
 「よかった。美雪ちゃんは、デパート、行ったことあったっけ」
 まだ、ない。
 でも、新しくできたことは聞いている。

 「いえ」
 「それは、ちょうどよかった。健太、美雪お姉ちゃんを、ちゃんと案内するんだぞ」
 伯父さんは、いつも、健太君へ、友だちみたいに話しかける。

 健太君は、「うん」と言いながら、うつむいた。照れているのかな。健太君のつむじがきれいに渦を巻いている。

 お茶を飲んでいると迎えの車が来た。
 玄関から健太君と二人で、葬儀に出かけるおばあちゃんと、伯母さんと、伯父さんを見送った。

(つづく/文・竹内みちまろ/イラスト・ezu.&夜野青)

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