人気ナンバーワンの早大・斎藤佑樹は、早実の可愛い後輩というだけに止まらない。病床の王監督を励ましてくれ、しかも王助言通りの進路でドラフト1位候補になっているだけに、約束を果たしたいところだろう。
開幕前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表監督として世界一になった06年のシーズン中、胃ガンであることが発覚。入院して胃を全摘出する手術を受け、療養中だったソフトバンク・王監督を勇気、元気づけてくれたのは、ハンカチ王子、早実・斎藤だった。「病気の王さんを勇気づけ、元気になってもらうためにも、優勝したい」と宣言して有言実行。「言った通りに本当に優勝してしまうんだから、たいしたものだ」と王監督を感謝感激させている。と同時に、王監督はこうアドバイスしている。「テレビのワイドショーでハンカチ王子などと騒がれている浮ついた状態でプロ入りしない方がいい。大学へ進学して本当の実力を身につけてからプロ入りすべきだ。そうなって、ウチに入ってくれると一番うれしい」と。
その言葉通りに早大・斎藤はドラフト1位候補にあげられている。王球団会長とすれば、無条件で1位指名したいところだろう。が、同じ早大には大石達也というドラフト1位候補右腕がいる。監督を勇退、福岡県民栄誉賞を受賞した際に、「ダイエー、ソフトバンクで長い間、監督をやり、暮らしてきた福岡は第二の故郷のようなもの」と語った王球団会長にとって、大石も重要な存在だ。福岡大大濠高校出身だからだ。「地元出身のスター候補選手を最優先で獲得する」というホークスの大方針がある。しかも、「人気の斎藤に実力の大石」という評価がスカウトたちの本音だ。
自らの目で現在の真の実力を見極めようと、4月25日に神宮へ足を運んだ王球団会長だが、見られたのはリリーフした大石だけで、斎藤の登板はなし。空振りに終わっている。斎藤vs大石の二者択一だけでも悩ましいのに、豪速球右腕の中大・沢村拓一がいる。12日に神宮で視察した王球団会長は「評判通りだ」と絶賛している。
この沢村のバックには、中大総監督の宮井勝成氏がいる。早実のエース・王が甲子園の選抜大会で優勝した時の監督であり、世界の王の生みの親とも言える恩師だ。現在でも毎年1度、早実時代のチームメートと一緒に宮井氏を囲む会が開催しているほどの密接な関係だ。さらに中大の監督は巨人時代の僚友の高橋善正氏ときている。
母校愛か、第二の郷土愛か、はたまた恩師への義理か。王球団会長は、究極の三択を迫られている。