年の瀬が押し迫る中での解散は、国民有権者にとってはとんだクリスマスプレゼントだ。しかし、ねじれ国会での政権運営は厳しく、解散を遅らせれば遅らせるほど追い詰められる。
28日の参院外交防衛員会でさっそくその典型的事例があった。突然、カップめん1個の市場価格を尋ねられた麻生首相。「400円ぐらい?」と思いっきり間違えてしまった。ヤマを張ってでも答える度胸は買うが、世間知らずのセレブぶりをみせつけた格好。質問した民主党の牧山弘恵氏から「170円ぐらい」と指摘されて苦笑い。庶民派をアピールしようと19日に都内のスーパーを視察した“予習”は全く実らなかった。
29日の朝刊スポーツ紙各紙は、当然ながら社会面でこのエピソードを大きく取り上げた。これではクイズ番組でボケ回答を連発するおバカタレントである。当面の解散見送りに“話が違う”と反攻姿勢に転じた民主党が、今後はカップめんの値段を聞くにとどまらず、あの手この手で首相を締め上げるのは確実だ。
首相は記者団に「政局より政策」と繰り返すばかりだが、実際のところはボロが出まくって求心力が低下する前に、解散を打つ必要性に迫られている。
次年度予算案は毎年、12月24日のクリスマスイブごろまでに編成されるのが通例。このあと事実上の正月休みに入る。首相の「政治空白をつくらない」方針に従えば、通常国会が召集される来年1月中下旬までの休み期間中に、解散総選挙を打てば大義名分は立つ。
与党内では、この期間を利用して、「麻生カラー」を反映させた来年度予算案編成直後に解散に踏み切る“クリスマス解散”説が浮上。この場合は、1月6日公示〜18日投開票の日程が有力という。街中がジングルベルで浮かれモードの好機とみられる一方、資金繰りにあえぐ中小零細企業の神経を逆なでする危険性もはらんでいる。
逆にこの機を逃せば、あとは来年度予算成立後の来春か、来夏の東京都議選とのダブル選挙、来年9月の任期満了選挙のいずれかとなる。公明党は都議選の前後3カ月は避けたい意向。クリスマスに“麻生サンタ”はやってくるか?