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『ONE PIECE』第60巻、麦わらの一味再結集への劇的効果 (ネタバレ注意)

 人気漫画『ONE PIECE』が第60巻を2010年11月4日に発売した。出版する集英社の発表によると初版発行部数は340万部で、単行本は累計で2億部を突破した。この巻では主人公ルフィや兄エースの少年時代が回想され、麦わらの一味は再集結に向けて動き出す。

 『ONE PIECE』は尾田栄一郎が週刊少年ジャンプに連載中の海洋冒険ロマンである。海賊を目指すルフィが麦わらの一味と共に「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を求めて冒険する。しかし、シャボンティ諸島で麦わらの一味は海軍大将・黄猿らに追い詰められ、バーソロミュー・くまによって世界各地に飛ばされてしまう。
 この結果、第53巻以降はルフィ中心の冒険となり、仲間の登場はほとんどなくなった。それまで一緒に冒険してきた仲間不在のままで、物語が進行するという異常事態である。この状況は女ヶ島、インペルタウン、マリンフォード頂上決戦と単行本8巻分もの長さに渡った。
 ところが、これが逆に好評であった。インパクトある新キャラクターや懐かしのキャラクターが登場し、バトルはテンポ良く進み、過去の伏線が回収された。マンネリ化批判も押し返し、『ONE PIECE』人気は絶好調となった。映画『STRONG WORLD』や神保町ONE PIECEカーニバルなど『ONE PIECE』人気を語る要素は数多くがあるが、根本的な要因は連載マンガの面白さである。

 麦わらの仲間達はバラバラにされたが、いずれは再集結することは予想できる展開である。それ故に単に再集結するだけでは面白みがない。どのように再集結するかが見どころになる。
 第53巻で女ヶ島に飛ばされたルフィはエースが囚われたことを知り、救出を決意する。この先はルフィの関心をエースが占め、少なくとも作品から認識できる限り、仲間達は忘れられた。この巻で再び仲間達に関心が向くことになるが、それが実に劇的な形で描かれた。

 『ONE PIECE』のメインのストーリーは麦わらの一味がワンピースを求める冒険であり、エースの救出は脱線である。しかし、ルフィが仲間達に目を向ける要因としてエースの死は物語的に重要な意味を持っていた。伏線が緻密に張り巡らされ、無駄がないと評される『ONE PIECE』の価値を再認識した。

林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)

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