人魚のミイラが祀られている木箱の御簾が除けられた。
ついに目の前に姿を現した人魚のミイラ。
大きな頭に見開かれた目。口には魚のようなギザギザの歯が生えていた。魚の尾びれがついた下半身。
指には鋭利な爪と水かきがついている。
この人魚のミイラは身長170cm、50歳ぐらいの男性の変体なのでいわゆる”人魚姫”のような美人ではない。
だが丸顔にくりっとした瞳は愛嬌を感じさせる。
昔は頭髪があったのだが今は抜け落ちて丸坊主になっていた。しかし、よく見るとうぶ毛が生えていた。
人魚を食べると不老長寿になるという言い伝えから鱗が随分持ち去られてしまったらしい。
宮司様の話によると実際にこの人魚のミイラを拝むことで御利益があるそうだ。
戦争に行って無事に帰って来られた人。
塩水しか出なかった土地から不思議な事に突然真水が出てきて現在はその場所で染色工場を営んでいる人。
今でも感謝の念を込めて参拝に来ている人々がいる。
宮司様は語った。
「宇宙と皆、一心一体。相対的なもので皆さんの気が集まればそれだけ思いが通じるのだと思います」
昨今はミイラのX線写真を撮って科学的に暴こうとするが、例え材料が何であれ魂は宿っていれば私は本物だと考える。
無駄な殺生はいけないという伝説に基づいたものから、世の中に知らしめて欲しいという意味でこの人魚のミイラは存在する。
非常に珍しく、また神秘の世界を体感できるものである。機会があればぜひ拝観することをおすすめする。
天照教本社
富士宮市粟倉2607
拝観料金:大人500円 小人300円(撤餞付き)
写真撮影:小出 真
(怪談作家 呪淋陀(じゅりんだ)山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou