永田町関係者は「麻生首相による民主党批判は、まるで野党党首のそれだった。もともと守りより攻めが得意な政治家だから、下野した後の党内での好ポジションを狙っているのだろう。受ける鳩山代表もまたすっかり首相気取りでおもしろかった」と指摘。与野党党首がともに逆転した立場で討論を行っていた印象を抱いたという。
党論の主導権争いはし烈をきわめた。お互いにむき出しの憎悪をぶつけあったため、党首討論後には目線も合わせられないほどだった。
首相は民主党政策を「財源のないばらまきは無責任。安保政策で一貫性のない党には日本の安全を任せられない」と批判し、政権担当能力に疑問を呈した。鳩山氏は「与党の政策は官僚主導でつくられ、天下り天国の無駄遣いの多い国にした。これは官僚任せの政治では打破できない」と反論し、政権交代が必要だと訴えた。
衆院選に向けた解散後の前哨戦で、両党首が一対一の対決型討論を行うのは初めて。学者や経済人らでつくる民間団体「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の主催で、1時間半にわたり行われた。
消費税率引き上げに関し、鳩山氏は「4年間は上げる必要はない」と重ねて増税を否定。首相は「景気回復後、社会保障と少子化対策のため抜本的税制改革をお願いする。必要なら国民の耳に痛いことも言うのが政治の責任だ」と強調した。
鳩山氏が、「2010年度後半には年率2%の経済成長を実現する」とした自民党マニフェストに触れ、11年度から増税を実施するかただしたのに対し、首相は「名目成長率が2%になれば、遅滞なくできる状況になったと判断できる」とした。
鳩山氏は民主党政策を「家計を潤わせて内需を拡大し、経済を展開させるのが基本的発想だ」と説明、「無駄遣いを放置し、借金漬けにして、揚げ句の果てに消費税増税。こんな政治なら誰でもできる」と訴えた。
首相は「成長政策のない政党に景気回復は実現できない。われわれは経済成長して、経済のパイを大きくして配分を考える」と主張した。
鳩山氏は衆院選で勝利した場合の政権の在り方に関し「衆院でいくら議席を占めようが、社民、国民新両党との連立を前提に考えている」と明言。海上自衛隊によるインド洋での給油活動に関しては「すぐにすべてを変えるという発想ではない。外交には継続性もあり、現実的に対応していきたい」と述べた。衆院選で自民党惨敗ならば、麻生首相は党総裁を降りることになる。先のことなど考えないほうがいい。